第9話
「それじゃ最後に、俺がいきます」
そう言って神木公平は、佐敷瞳子と軽く立ち位置を入れ替える。そしてそのまま、勢いよく水晶玉に触れた。
次の瞬間、再び黒板から眩い光が溢れ出る。
「ま…またかよっ」
白石和真が両目を覆いながら、嘆息混じりの声を吐き出した。
そして、一同が目にしたのは…
カミキコーヘー
タイリョク:100
マリョク :100
チカラ :50
スバヤサ :50
ユニークスキル:タンイセン
パーティスキル:ミガワリ
「………は⁉︎」
神木公平は我が目を疑った。
「ドワッハッハー、何だよお前、このステータス」
白石和真がお腹を抱えて大笑いする。その耳障りな笑い声に、神木公平は顔を真っ赤にして唇を噛み締めた。
「カズっぺーっ!」
その瞬間、鳴神ひかりの声が部屋中に響き渡る。その強烈な勢いに、白石和真は思わず息を飲んだ。
「ひ…ひかりちゃん?」
白石和真は恐る恐る鳴神ひかりを確認する。しかし当の彼女は俯いたまま、それ以上何も言葉を発しなかった。
二人のやり取りを眺めていた咲森勇人は、安堵したようにひと息を吐く。それから両腕を組んで、ユミルの方に目線を向けた。
「ちなみにこの能力は、現地の人間と比べてどうなんだ?」
「そ、そうですね…」
ユミルは改めて、黒板の表示に視線を移す。
「ステータスと言うのは、鍛練によって鍛えていくものですが、肉体の成長によっても、ある程度上がっていきます。申し上げにくいのですが、この数値ですとおよそ10才児並かと…」
「何だお前、運動音痴の引きこもりかよー?」
再び白石和真が「ギャハハ」と笑う。しかし鳴神ひかりの無言の圧力に、ゆっくりとフェードアウトしていった。
「もうひとつ、もしこの世界で死んだら、俺たちはどうなるんだ?」
「死は死です」
ミサが抑揚のない声で、そう告げる。
「もっとも、あなた方の世界では『消息不明』と言う扱いになるのでしょうが…」
「そうか…」
咲森勇人はひと呼吸おいてから、神木公平に真剣な眼差しを向けた。
「申し訳ないが神木くん、キミを一緒に連れて行くことは出来ない」
「え、何で…?」
神木公平が蒼い顔で絶句する。
「おいおい、いくら何でもそれは…」
「そ、そーだよ。ちょっとくらいステータスが低くたって、あんなに光ったんだから…あ、スキル…きっとスキルがスゴいんだよっ!」
「あくまで推測だが、そのスキルが問題なんだ」
白石和真と鳴神ひかりの弁護を聞きながら、咲森勇人は難しい顔で両腕を組んだ。そうして右手の中指で、クイッと眼鏡を持ち上げた。
「これ、ですね」
察したように、ミサがスキル名称をタップする。
『ミガワリ(仲間のダメージを代行する)』
「何で? スゴいじゃん! カズっぺもいるんだし何の問題もないよ」
「この体力でもか?」
咲森勇人の反論を受けて、鳴神ひかりは思わず言葉に詰まる。
「だ…だったらもうひとつ、スキルはもうひとつあるよっ」
『タンイセン(省略表示)』
ここにきて、表示が省略の謎スキル…
さすがの鳴神ひかりも、これには言葉を失った。
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