第93話 番外編 9
「何が……起きたの…?」
地面に投げ出された鳴神ひかりは、頭を押さえながら何とか上半身を起き上がらせた。そばには白石和真や騎士団員が倒れている。
「カズっぺ⁉︎ 皆んなっ!」
鳴神ひかりの声に反応するように、騎士団員の面々が何とか身体を起こし始めた。しかし爆心地にいた白石和真は、呻き声を漏らすだけで、うつ伏せのまま動かない。
「カズっぺ、しっかりして……あぅっ」
心配になった鳴神ひかりがその手を伸ばした時、彼女の全身に激痛が走った。どうやら身体中に、打撲やら裂傷があるようだ。
「ひかり…ちゃん」
白石和真は、鳴神ひかりの小さな呻き声に細目を開けると、必死に右手を前に伸ばした。
「エリア…ヒール」
その瞬間、若緑色の魔法陣が輝きを放ち、6人の身体を優しい光が包み込む。直後に白石和真は、跳ねるように立ち上がった。
「アーイーツーらー……ひかりちゃんを、こんな目に合わせやがってーーっ!」
(起きたか、小僧)
同時に白石和真の頭の中に、ゴスロリ少女の声が響く。
「な…っ⁉︎」
「えっ…?」
白石和真が自分の頭を押さえて目を見開いた時、同じように鳴神ひかりも驚きの声を漏らした。見ると周りの騎士団員も、同じく焦ったように騒ついている。
(まー何と言うか…お主らただの人間では、どう逆立ちしても奴らには勝てん)
「お前、何を言って……」
(じゃから、一撃…渡したダガーで、何とか一撃入れておくれ)
「なんでカズっぺが…っ」
(大きな声を出すでないっ!)
反論を即座に遮られ、鳴神ひかりは撫然としつつも心の中で思い浮かべた。
(何で自分でやらずに、カズっぺに頼むの?)
(儂で同じ結果を求めるならば、半殺しにまで追い詰めねばならん。2対1のこの状況で、流石にそれは骨が折れる)
(それって…どーいう意味?)
(お主らは、所詮は人間…と言う事じゃ)
「答えになってねーよっ!」
白石和真は唐突に落ちていた黒いダガーを拾い上げると、左手で鞘を抜き放つ。
「何をする気か知りませんが…全く無駄ですわよ」
するとルサルサが、白石和真のその行動に、目を細めて嘲笑った。
「だったらウチがーーっ!」
そのとき鳴神ひかりが、雄叫びと同時に冥杖バルキエラをルサルサに向ける。直後に杖の先端に、1メートルに達する金色の魔法陣が浮かび上がった。
「サンダー…ビィーーム!」
次の瞬間、数メートルにも及ぶ巨大な光線が、一瞬でルサルサの全身を包み込む。
そのまま直線上にあった丘の一角を、地形が変わる程に吹き飛ばした。
パチパチと空気が弾ける感覚の中、照射し続けた光線が静かにゆっくりと収束していく。
やがてその光線がなりを
「ウ…ソ」
鳴神ひかりは、言葉に詰まって目を見開く。
「今、何かしたかしら?」
ルサルサは涼しい顔を見せながら、少し乱れた髪を右手でフワッと整えた。
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