第68界 ある戦士の見た物
学園〈ユニベルシア〉が存在していた座標上空を、武装ヘリが数機飛んでいた。
バラバラとローターの駆動音を響かせて滞空する中の一機から真下の闇を見据えする元ワールダー〈アモン〉こと
今から行うのは地球を守るための戦い。〈ワールダー〉としてその使命を負っていた身だが、皮肉なことにその全てが
「だから恨みもするが、感謝もしているぞ…黑き神」
「隊長! 地上より正体不明の飛翔体複数、迎撃お願いします!!」
「承った」
懐から取り出した鋼の立方体を構えて、起動させる。
「スペアは作っておくものだな」
与えられた〈ワールダー〉の力は奪われた。だがこんなこともあろうかと、その力を解析したおかげで、人工的に再現可能となった対異世界兵装。
箱が内側から光を放ち、変形してバラけた金属片が〈アモン〉の全身に装着され、防具となり武具となった。
「〈
《system activated... fail saver adjust complete.》
機械音声が響き、駆動音とともに右手に巨大な剣槍が出現。穂先が帯電し、エネルギーをチャージしていく。
ヘリの扉を開けると、報告通り眼下からこちらに向かって、翼を持つ敵が無数に襲ってきているのが見えた。
「闇の尖兵といったところか。知能の気配無し…敵性個体として排除させてもらう!」
槍から放った青い雷撃のスパークが、敵の翼をもぎ、その身体を焼き払う。焦げた大気の臭いに混ざって、別の強烈な気配がこちらを威圧してくる。
「まだまだ序の口、か」
「隊長! このまま降下しますか!」
「無論だ。全隊に通達。降下作戦開始、迅速確実に目標地点を制圧する。目標は〈ユニベルシア〉。総員、突撃!!」
「「「ラジャー!!」」」
特殊戦闘服に身を包んだ隊員と共に、透もヘリから飛び降りる。じわっとまとわりつくような闇のモヤを抜けて、〈ユニベルシア〉内部に到達すると、そこにはこの世のものとは思えない異常な光景があった。
大地が砕け、中途半端な岩塊となって宙に浮かんでいる。校舎と思しき建物は瓦礫の群れとなっている。人の気配はない、どころか生命が存在できる空間ではあり得ない。
「何が起きているというのだ…」
「こちらに来てください、隊長!」
部下の一人に呼ばれて異空間を進むと、その先には巨大な繭のようにも大樹のようにも見える漆黒に染め上げられた物体が鎮座していた。
その周囲を徘徊する敵獣の姿もある。恐らくアレはこの空間において重要な物に違いない。どうにかして破壊せねばなるまい。
「各隊に伝達。巨大なオブジェクトを発見次第破壊を試みろ、私も試す。周囲には護衛が居る可能性がある。注意しろ」
「了解です!」
指示を飛ばすや否や、透も〈
「だが、こちらも超常には慣れているのでな! 吠えろ、〈
剣槍の刃の部分が高速で振動する。悲鳴のような甲高い風切り音を放ちながら、鋭い一閃で獣をまとめて叩き斬った。なおも蠢く残骸には後衛の隊員が銃撃や砲撃でトドメを刺していく。
この連携力こそ非力な地球人ならではの戦い方だ。異界の者を相手にしても引けを取らない。
「各員、陣形を維持。私があの繭を破壊する!」
「「「了解!」」」
隊員たちの援護を背に、身に纏う駆動鎧に流れるエネルギーの全てを剣槍に集中させて、前に突撃。一条の光尾を引きながら繰り出した剣槍の一撃でもって、繭の表面を破壊することに成功する。
砕け散る破片の中、油断なく武器を構えて、繭の内側に意識を向ける。
果たしてその内側に在ったのは――――――。
「なん、だ、これは」
繭とは通常なにかの卵であり、その中には当然成体に羽化するナニカが眠っているはずだ。しかし、今しがた壊した分厚い膜の内で眠っていたのは全く予想とは異なる物。継ぎ目一つない巨大な “卵” でありながら、ドクドクと心臓のように脈打つこの世ならざる物体。
ソレを目の当たりにした直後、透の意識は暗転した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます