第n界 ニャルラトホテプの眼:確定未来
「あーあ。ついにやってしまったねぇ、生徒会長殿は。これじゃあ、結局手詰まりになることに変わりはないというのにさァ!」
〈ユニベルシア〉から遠く離れた孤島。石動琉香が根城としていた隠された研究施設。そのうちの一部屋で、女性は美しい金髪を揺らしながら、大口を開けて笑っていた。
学園の保険医リモル。それが彼女の名前、そうであるはずだったが、今となってはそんな隠れ蓑は必要ないと、彼女は醜く微笑む。
「くくく…。まったく、この世界は本当に楽しませてくれることだね。琉香も化身を捨ててしまうつもりみたいだし、会長殿も権能を奮い始めた。さぁ、さぁ、さぁ! 魅せてくれ、キミ達の狂気の果てを!!!」
辺りの研究資料やカップなどの品々を、楽しげに蹴とばしながら、リモルはくるくると踊り舞う。楽しく仕方がないといわんばかりの様子は、見る者によっては異常で狂的に映っただろう。
狂喜乱舞という言葉がふさわしい暴れ様を見せていたリモルがピタリと動きを止める。止めた。その顔が、顔だけがギギギとこちらをねめつける。
「何を見てるのさ。君はどこで何をしているんだぁ? 観ているのだろう、この世界、この茶番、この未来をさ!」
誰に叫んでいるのかもわからない、完全に頭のネジが飛んでしまったかのように喚き散らすリモルは、ひとしきり周囲をねめつけるように見回した後に、ため息を一つついた。
「痛み分けやリセットしかないなんて、つまらない。どん詰まりの袋小路は見てる君からしても本意じゃないだろうにねェ」
床に落ちてしまった本を手に取り、棚に戻すリモル。彼女のかけた声に応じるかのように、誰かの囁き声が部屋に広がった。
「…なに? まだ終わりじゃない? へェ…?」
だとするならば。
自分がこの世界を去るのはもう少し後でもいいのかもしれないと、そうほくそ笑むリモルであった。
(閑話休題)
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