第69話 大事な場所
ベンチに座りそんな思い違いな思考について考えていればあっという間に時間も過ぎていた。けれどそんな考えに囚われていた僕は時間に全然気づきもせず考え続けている僕に誰からか声がかかる。
「近藤くん、おまたせ……ってすごい顔しているけど何かあった? それとも私のことで困らせることしてる? 」
そう声をかけてきたのは只野さん。僕を見つけてくれて声をかけてくれたんだろうけれどどうも僕は考え込んですごい顔をしていたようだった。おかげで変に気を使わせてしまったようだった。
「ごめん。只野さん、おはよう。ううん、ただ考え事をしていただけだよ。って僕、すごい顔してた? 」
そうじゃないよと只野さんへと伝えながらも僕はそんなにすごい顔をしていたのかと思わず尋ねてしまう。
「うん。すごく怖い顔になってた。近藤くんもあんな顔にもなるんだってちょっとびっくりしたかな? 」
そう只野さんは僕に教えてくれた。ってそこまで言われるとはどんな顔になってたんだろう……ちっょと気になってしまうけれど、もうこの話はと思い僕は話を逸らすように
「そっかそっか……。で、今日はどうするの? 付き合ってって言われたけれど買い物とかでも行くの? 」
そう、今日なにをするか。それを僕は聞いていなかった。というより聞かなかった。いや聞くことさえ忘れていたと言ったほうが良いのかもしれない。さっき考えていたことばかり考えていて今日只野さんと会う、そのことしか考えていなかった馬鹿な僕だったから。
「うん。実際ね。別に呼び出す必要まではないことだったんだけどね。ただ、近藤くんとゆっくり今日はここで話をするだけ。はははっ学校で話すだけで済むことなんだけどね。でも……」
只野さんの話では特に用事というものはないらしい。ただ、僕と会話をするということだけらしい。別に僕も話したいと思っているから……別に問題はないし。そう考えていると只野さんは続けて
「ここってね。私の家の近くにあるんだ。って私の家、すぐそこなの。だからね。この公園ってほんと、いろいろと思い出が詰まっている公園なんだ。だから……ここに近藤くんと来てみたいって思ってて……今日はここでと思っているんだけれど。喫茶店とかのほうが良い? 」
と只野さんはそう話してくれた。そうなんだ。只野さんの家ってこの近くで、そしてこの公園は思い出がたくさん詰まった公園なんだ。僕はその話を聞くと思わず公園を見渡した。そこは遊具が多くあるわけでもなくそこまで広くはない。そしてそこそこの広場があり、また広場を外れれば植物も多く植えてあるそんな公園だった。
「そうなんだ。そんな場所なら僕はここで良いよ」
僕は見渡しながらそう只野さんに答えていた。そんな場所なら大事な場所だと思う。僕はここで良いと只野さんへと返事をした。
「うん、ありがとう」
その返事に只野さんは僕へと言葉を返してくれた。
そして只野さんは僕が座っているベンチを見て
「じゃあ、私もベンチに座っていい? 近藤くんの横に座ることになるけれど……」
少し照れながら言う只野さんに僕は無言で首肯すると只野さんは笑って僕の横に座ったのだった。
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