第61話 妖しい顔の四季さん



 翌日、僕が学校へと着き席へと座るとすぐに女性ふたりが僕のもとへとやって来た。ああ……昨日の件だろうなあと僕は思いながらも


「おはよう、今井さんに只野さん」


 そう挨拶をした。それに対して


「「おはよう、近藤くん」」


 ハモるように挨拶を返してきたふたり。それを聞くと僕はほんと仲がいいなあと思ってしまった。


「で、朝から僕のもとに来たのは昨日の件? 話なら昨日真也が僕の家まで来て話して行ったよ。今井さんも頑張ったね。とりあえず真也は考えるってことだから……少し待たないといけないかもね」


 とりあえず僕はそんなふたりに昨日真也から話を聞いたことを伝えた。すると


「そっか。真也くんから話を聞いたんだね。とりあえず真也くんの返事次第で近藤くんの案、合流するって話に返事するから。それとね……」


 今井さんがそう僕に伝えるけれども、最後の方はなにかを伝えたいけどなかなか言い出せない言葉が詰まった感じになっていた。何を言おうとしたんだろう。僕は不思議に思いながらも辛そうな感じの今井さんを急かすのも嫌だったので黙って先を話し出すのを待っていた。

 只野さんも今井さんが何を言い出そうとしているのかわからない感じだった。そう、ふたりにしては珍しい感じだ。


 そして今井さんが少し黙り込んだ後、先程詰まった先の言葉を話し出す。


「もし真也くんが私のことを避けたいって言ったなら私は駄目でも冬だけはそちらに入れてくれないかな? 」


 今井さんが考えていたのは自分が駄目な場合は只野さんだけでも入れて欲しいという考えだった。


「春! 何言ってんの! それなら私も行かないわよ。春だけ置いてそんなことしないわよ。見損なわないで」


 そしてその言葉に只野さんもすぐに反応して今井さんに言い返していた。


 うん、僕としてもふたりを離すなんてしたくないよ。


「だって冬は近藤くんの側に居たいでしょ? だったら冬だけでも行けるなら行ったほうがいいよ」


 今井さんは只野さんに反論されても「行ったほうがいい」と再度言い返す。只野さんはそれを聞いてまた反論しようとしたところに……


「近藤くん、おはよう。朝から賑やかね」


 といつの間にか隣のクラスから四季さんがやって来ていた。というか言い合いしているのに落ち着きすぎだって。のほほんしているって表現が合ってるよ。


「ああ、四季さんおはよう。まあいろいろあってね」


 と呆れ気味に僕がそう四季さんに伝えると


「なにその呆れたような表情で私を見て……」


 と何食わぬ顔で四季さんは言ってきたので僕も


「呆れているんだよ、四季さんに」


 と素直にそう言い返してやったのだった。




「……呆れられるのも殆どないことだし貴重だわね。ほんと近藤くんって飽きないわね。それで話は変わるけどこの賑やかな原因を聞いてもいいのかな? 」


 と四季さんは何食わぬ顔のままそう僕たちに尋ねてきた。僕としては話していいのかどうか分からず黙っていると


「えっとね。私が真也くんに昨日告白したの。だからその結果で私と真也くんとの関係が悪くなったらこちらに合流できないでしょ? だからその話をしていたの」


 今井さんが素直に四季さんにそう説明していた。それを聞いた僕は、今井さん少し変わった? なんて思ってしまった。今井さんって結構内気な性格だと思っていた僕だから、ここのところの行動力に驚かされっぱなしだ。

 そして只野さんも今井さんが素直に四季さんに伝えたものだから驚いている様子だった。もしかすると只野さんも僕と同じことを思っているのかもしれない。


「なんだ、そんなことか」


 けれどもそれに対して四季さんは「そんなこと」だとあっさり言ってきた。いやそんなあっさり言えることじゃないと思うんだけどなあ。

 だからか、四季さんの言葉に今井さんはすこしムッとした顔に変わっていた。そんな今井さんに


「ああ、今井さんが告白したことがそんなこととかじゃないからね。合流するって話の方だから。というのもさ。今井さんと只野さんがこっちにくるのに反対な人は誰が居る? 今のところ居ないよね? それでもし島田くんが反対するとするなら出ていくのは島田くんのほうになるんじゃない? だって今井さんは避けたりしようとは思っていないんでしょ? 嫌だと思う、それで周りに迷惑をかけてしまうと考えた人が抜けようとする形になると思うんだけど」


 四季さんの言葉にあれ? と思ってしまった僕だった。なぜって。僕も以前のグループから抜けた身だから。僕の存在がみんなに迷惑をかけてしまうかもしれないからと出て行ったんだ。今回の問題になる人って今井さんと言うより真也になってしまうんじゃないかって……確かにと。形的に後から入ってくることになってしまったから今井さんが悩む原因となっただけだ。

 でもさ、元々は僕らは一緒に居たわけで合流する順番に違いがあるだけなんだよなあと。


 そんなことを僕が考えていると


「あのね、ちょっと島田くんに私も話があるから今日の昼休みにでも話してみるわ。変な話じゃないから大丈夫。島田くんのこと好きでもなんでもないから。今井さん安心してね。にしても……まだ殻をかぶったままなのは……だけなんだね」


 そう四季さんは続けて僕たちに告げてきた。話があるのか。なんだろうね。そして最後の方の言葉は聞き取れなかったけれどなんて言ったのだろうか? 僕が尋ねたい気持ちになっているところに被せて


「近藤くんはアキと話があるでしょ? アキから話があるって言われてたよね? そちらをしっかり聞いてきてね。今井さんと只野さんは私が島田くんと話をした後にまた話しましょ? 」


 そう言うと妖しい顔で笑う四季さん。


 うーーん。本当にこの人はわからない。それでも今回は僕は四季さんに任せてみようと思うのだった。なんでって? 僕たちでは今は待つことしかできないと思ったから。

 今井さんと只野さんも僕と一緒で他に解決策が思いつかないからだろう……だまって四季さんの言葉を受け入れたのだった。

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