第02話 真也



 翌日、頭にたんこぶを作りながらも学校へと来た僕。教室に着くと普段なら今井さんに真也の居るグループとも言ったら良いのか集まって話をしている中に入っていくのだが僕にはそんな気が全く起きることもなかったのでそのまま僕の席へと向かい鞄を横にかけて席に座った。

 しかし……テニスボールって結構痛いんだなあと僕は思っていた。少しは痛みは引いたけれどたんこぶができるくらいに威力があったわけで。テニスボール恐るべしと思いながら顔を机に付けてただボーッとしていた。


 そんな僕を見ていつもと違うと思ったのだろう真也が僕の元へとやって来た。そしてその真也を見つめる今井さんがいた。


「おはよう、夏樹。どうした? いつもなら春の側で好き好きオーラ出して騒いでいるお前が何も言わず席に座って。熱でもあるのか? 」


 やはり心配してくれて来てくれていた真也だった。だから真也にははっきり伝えとこうと


「ああ、もう今井さんに近寄らないから。昨日しっかり振られたからね。おまけに2度目だ。だからもうあのグループにも行かないからさ。まあそれだけのことだ。気にしなくていいよ」


 と僕が真也にそう言うと


「え? 夏樹が諦める? あんなに好きだったのに? なにがあった? 嫌なことでも言われたのかよ? 」


 と僕の気持ちを知っていた真也は僕に詰め寄ってきた。そんな真也に僕は


「声が大きいって。まあ周りにもバレバレだったし問題ないかな? まあ簡単に言うと今の僕は空っぽで何も考えたくないってところかな。ということで真也もしばらく僕を放っといてくれないかな。なるべく早く戻れるようにはするからさ」


 と真也にもしばらくは放っておいてほしいとお願いした。真也は悔しそうな顔をしながらも


「分かったよ。でもなにかあったらちゃんと言えよ」


 そう言っていつものグループに戻っていった。ただ、真也の今井さんを見る目がとても冷たいそんな気がしてしまったが。




 僕は1日ひとり席でぼーっと過ごしていた。今考えるとこんな時間を過ごしたのは高校になって初めてかもしれない。おまけに中学時代も真也とよく一緒に居たしなあと中学時代でも思い出せないそんな気がした。


 さて今は昼休みに入っているので席で弁当を広げひとりで食べようとしていると真也が


「ひとりで食べるなら俺と食べようぜ」


 とグループからわざわざ抜けてやって来てくれた。そしてそんな真也を今井さんは朝のようにまたじっと見つめていた。

 

 はぁ僕としては真也の気持ちは嬉しいことなんだけど


「放っといてって言ったのに。それに真也があのグループ抜けたら駄目だろ。中心は真也と今井さんだろが」


 と僕は真也にそう告げた。


「悪いが俺としてはあのグループより夏樹のほうが大切なんだよ。何年の付き合いだと思ってんだって」


 そう言って机をひとつくっつけてきて俺の前へと座って弁当を広げ始めた。


「はぁ……真也の気持ちは嬉しいんだけどな。僕があのグループから恨まれるんだって」


 特に今井さんからねと思いながら僕は困ったようにそう告げると


「いやさ、俺としても今日は春と一緒に居たくないんだよ。夏樹をここまで追い込むなんて……俺さ、夏樹が落ち込むところなんて今まで見たことなかったかもしれない。あっ一度目に振られた時は泣いてたか。まああれは別としてそれ以外ではお前いつも前向きで俺を助けてくれてさ。お前の口癖「ふたり一緒ならやれるさ」って。あれでいつも助けられたんだよなあ。いやひとつだけテニス部だけは一緒に入ってくれなかったな」


 そう真也は言ってきた。テニス部……僕にはあれは出来ないって。


「運動が苦手な僕にテニスとかできるわけ無いだろ。今更それを掘り返さないでくれよ」


 と僕は真也に困惑顔でそう答えたのだった。





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