第03話 僕を探しに来た人
僕が困惑顔をしているのを真也は見ながら
「夏樹、お前が抜けるなら俺も本気で抜けようかな」
そんな事を言いだした。いやだから真也が抜けたら駄目だって。
「だからさっきも言っただろ。真也が抜けたら困るって。僕が恨まれるよ、ほんと」
と僕が止めるように伝えるが真也は
「だってお前、一時的じゃないんだろ? もう近づかない、行かないって言っているくらいなんだからさ」
そう僕に問いただしてきた。だから僕は
「今井さんに迷惑かかるだろ? 告白されて振った男がいると気まずいだろう? グループに近づいて振られてまで迷惑を掛ける気はないよ」
と告げると即座に
「でも、んなことしたら夏樹ひとりになっちまうじゃんか? そんなの許せないって」
真也は俺に怒鳴りつけてきた。はぁ真也は好意には疎いから今井さんの気持ちに気付いてないんだよな。おまけに僕が今井さんのことを好きだって知ってたからそういう目で見ることもなかったんだろう。
本音、真也の気持ちは嬉しい。
でもね、真也のことが好きな今井さんが困るだろ? お前が抜けでもしたら……
僕と真也がそんな言い争いをしているところに
「あの、すいません。あっ見つけた。昨日の人だ」
と声をかけてきた人がいた。その声で僕と真也ふたりは言い争いを止めてその人を見てしまう。ぱっと見僕には誰かわからなかった。こんな人知り合いにいたっけ? と。すると真也が
「ん? アキちゃんじゃない? 俺を探してた? テニス部の連絡か何かあったの? 」
と真也が話しかけていた。すると
「アキちゃんって呼ばないでよ。ううん。私が島田くんに用事なんてないから気にしないで。用事があるのはこちらの人」
と僕を指差してそんな事を言ってくる。って誰?
「え? 夏樹と知り合い? 」
「夏樹くんっていうのね。島田くんありがとう」
あっさりと真也に返事を返すアキさんって人。というか
「ごめん、誰? 僕知らないんだけど」
と僕が言うと
「え? もしかしてもう忘れられちゃったの? 早くない? 昨日テニスボールをぶつけちゃった人だよ。あっ髪結んでないからわからないんだ。こうすればわかる? 」
アキさんはポニーテールのように髪を束ねてその姿を見せてくれて僕はやっと誰だか分かった。
「ああ、昨日の人だね? で何の用? もう気にしないでって言ったよね。しつこいと嫌われるよ? 」
と僕は冷たくあしらうような言葉を知らぬうちに発していた。
「夏樹……お前アキちゃんにえらい辛辣だな? 」
それを聞いた真也はびっくりしながらもそう僕に告げたのだった。
僕の辛辣な言葉を物ともせずアキさんは話しだした。
「そんな事言わないで話を聞いてよ、夏樹くん。名前も何もわからなかったけど昨日ボールを当てちゃった時島田くんの方を見てたみたいだったから、もしかして知り合いかなあと思ってここに来てみたの。そしたら島田くんと一緒にいるじゃない。だからやったと思って声をかけたの」
アキさんはなぜか知らないけれど僕を探していたようだった。けれど僕はまた
「それで何の用? また可愛いとでも言わせたいわけ? 」
昨日のことを思い出したせいか辛辣な言葉を告げてしまう。
「うーん。言ってくれるなら嬉しいんだけど無理に言わせても虚しいだけだから言わなくていいよ。今日は探していただけ。君がどこの誰だかわからないと嫌だったからね」
アキさんはそんなことを言ってくるけれど僕としては彼女が何がしたいのかさっぱりわからない。
「そう。用が終わったならもう良いよね」
と僕が言うと
「分かりましたよ。今日のところは引き上げます。そのかわり、夏樹くん。私の名前は
そう言って教室からアキさんは出ていったのだった。
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