第49話 今井さんも



 そんな大和さんだったが少し申し訳無さそうにしながら


「ごめんなさいね。只野さんにはこうして出てきてもらうことができたんだけど……もうひとり……えっと近藤くんを振った人ね。その人を呼び出す案はわからなかったわ。島田くんとその子のこと、私よく知らないから。ふたりの関係にしても……ね。だから、只野さん。その子もどうにかして連れてきなさいよ? それは任せるから」


 そう只野さんに伝えていた。確かに今井さんは僕との関係では引っ張り出すことは難しいのだから。そんな大和さんの言葉に只野さんは


「はぁ……大和さん。ほんとおせっかいだわ。でも私の悩みなんて今さっきの言葉で吹っ飛んじゃったわよ。なんだか悩んでいたのが馬鹿らしくなっちゃったわ。でもね、春……あっもうひとりの子ね。あの子の場合はちょっと話してみないと私からはなんとも言えないから」


 そう呆れたような顔をして話し始めるが今井さんのことになると神妙な顔に変わりそう大和さんに伝えるのだった。




 そんな話をしていると只野さんに今井さんが近づいてきた。今井さん……聞いていたんだな。そして只野さんの肩をぽんっと叩くと


「大和さんはじめまして。今井 春と言います。話は聞こえていましたので……。というより冬。あなたみんなに近藤くんのこと完全にバレちゃってるわよ? みんな大和さんがうちのクラスに来たからって注目しているから」


 今井さんは大和さんに挨拶を、そして只野さんには僕のことがバレてるよと伝えていた。それを聞いた只野さんは顔を真赤にしながらも


「……もういいわよ。どうせこの前千葉さんと話をした時にどうせバレているんだから」


 と顔をそらしながらも只野さんらしい強がりな言葉を吐いていた。そんな只野さんを見ながらも今井さんは顔色を変えずに


「あと数日待って。そうしたらそちらに行くから。あっ近藤くん、今日放課後付き合って。話があるから」


 そう僕達に伝えてきた。今井さん……真也に告白するって言ってたし大丈夫なんだろうか? と思い今井さんの顔を僕は見ていたのだが、それに気づいたのか今井さんは


「近藤くん、大丈夫よ。もう前しか見ていないから」


 そう言って笑顔を僕に見せてくれた。ここ最近見ることのなかった今井さんらしい笑顔で。そんな今井さんを見せられた僕はこれ以上僕が考えても仕方ないなと考え


「うん、わかった。放課後ね。用事はなにもないからいいよ」


 そう返事をするだけにしたのだった。




 そんな4人の会話でさらにクラスの注目を浴びることになっていた僕達。そしてそろそろいつも現れる時間に……


「なっつきくんおは……ってなんで四季が居るのよ? ひとりで来たの? 信じられない。それに4人揃って……。なにかあった? また四季がしでかした? 」


 と元気よくアキがいつものように、いや、いつも以上に声を上げて現れた。それに対して大和さんは


「アキ、おはよう。うーん、なにかあったと言われればあったけれど問題ないわよ。ただ、アキと一緒に行動しかしなかったらアキよりこのクラスの人たちのこと理解できないでしょ? だから今日来てみたのよ」


 平然とした顔でアキにそう説明する。はぁ……朝からまたいろいろとあったなあと思いながら僕は


「アキ、おはよう。大丈夫だよ。後でちゃんと説明するから……時間がないでしょ? 」


 いつも朝練習で時間ぎりぎりなアキ。だから早く自分のクラスへと戻らなければいけないんだけれど、すごく気になる様子。けれど


「仕方ないなあ。とりあえず四季に聞いてみる。わからないことがあったら教えてね。四季、早くクラスに戻るわよ。みなさんお騒がせしました」


 そう言いながら大和さんの手を掴み引っ張って慌ててクラスから出ていったのだった。




「あのふたり……騒がしいわね。千葉さんは知っていたけれど、まさか大和さんまで。千葉さんに挨拶する間がなかったわよ」


 そう呟くのは只野さん。


「ほんと……なんだか毎日すごく賑やかそう」


 そんな事を言うのは今井さん。そして


「夏樹、おはよう。って3人集まって何してるの? というより3人仲直りしたわけ? 」


 と慌ててクラスに駆け込んできてそう尋ねてきたのは真也だった。そんな真也に僕は


「ああ、真也おはよう。そのへんはちゃんと説明するよ。とりあえずそろそろ席につこうか、みんな」


 と僕って説明ばかりだななんて思いながらも朝から疲れたので真也の相手をする気もならないよ、そんな様子でみんなに告げたのだった。

 

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