第28話 お願い
只野さんに言われた「今見ているのはアキ」という言葉に僕はドキッとする。確かに今井さんに振られた後アキに会って話を聞いてもらった時から心の中はアキのことばかりな気がする。アキに助けてもらったから? アキが気になるから? はっきり言ってまだよくわからない。それでも昨日アキに伝えた「大事だ」って感じていることには間違いはない。そんな事を考えていると背を合わせていた只野さんの鼓動が更に大きくなっているくのがわかった。そして
「近藤くん、千葉さんのことが好きなの? 」
と只野さんは聞いてきた。それは今考えていたとおりよくわからない。だから
「ごめん。まだよくわからないんだ。アキのこと好きか嫌いかで言えば好きだよ。大事だって思ってる。でも只野さんが聞いてきているのは恋愛感情としての好きだよね? それだったら今井さんに振られて数日、いろんなことで心の中がごちゃごちゃになってるからさ」
だから僕は思っていることを只野さんに素直に伝える。すると
「そっか。なら伝えたいことがあるの。聞いてくれる? 返事はいらないから」
と只野さんは少し緊張しているような感じで僕に尋ねてきた。
「うん。なに? 」
僕がそう返すと即座に
「今更こんな事言われても困ると思う。でも今伝えておかないと後悔すると思うから。ふふふっ背中合わせもこれが一番言いたいから、失敗したくないからしたんだよ? えーーとね。さっきまでの話で結構バレちゃったかなあと思ってるんだけど、私は近藤くんのことが好きです。さっき言ったとおり返事はいらないよ。だってこんな状態になってたのに私が近藤くんに受け入れられるとは思ってないから。千葉さんも居るしね。それに今まで春が好きな事わかってても好きな気持ち止められなかったんだから。だから近藤くんに彼女が出来るまでは諦める気はないし……ううん、忘れられないと思うから。思うだけでも許してください」
と只野さんは僕に告白をしてきたのだった。
ごめん。さっきまでの話で疑問には思ったけれどまさか好きだと思われているとは思わなかった僕。だから当然焦っていた。おまけに返事もいらないと言う。僕はどうしたらいいんだろうと困惑していた。そんな僕に
「なんで好きになったかと言うとね。真也くんって何でも出来るでしょ? ううん。本当は違うんだよね。出来ることは多いけど出来ないこともあって。それでも出来ないことを乗り越えているんだって。でも困難を乗り越えるときはいつも近藤くんが側に居たんだよ? 真也くんも近藤くんに素直に助けを求めてるよね。羨ましいくらいに仲が良くて。でもそれを周りの人達は見ていないんだよね。ただ「真也くん凄い」ってだけ。そう言えば近藤くん言ってたなあ。「僕は真也くんと同じことは出来ない。でも助けることは出来る」って。目立たずとも真也くんの事だけを考えている……そんな近藤くんが格好良かった」
と只野さんは告白は終わったからだろうか少し緊張は抜けた感じでそう話してくれた。僕はそんな事話したかなあと考えるけれど思い出すことは出来なかった。とにかく僕はなにか言いたいと口を開け
「えっと……只野さんありがとう。でもそれでいいの? こんな僕じゃなく別に良い人探す……」
と言葉をなんとか告げようとしたが
「ストップ! 近藤くん。人って好きになろうと思って誰かを好きになるわけじゃないから。この気持ちは簡単には変えられないの。だから思うだけでも許して? お願い」
と只野さんから遮られそう告げられる。そんな只野さんの言葉を聞き僕は何も言えなかった。だって僕だって今井さんを好きだったから。僕だって今井さんを好きになろうと思って好きになったわけじゃないのだから。簡単に諦められなかったから2度も告白したのだから。
「うん。わかった。僕は何も言わない。ただ、さっきも言ったけど好きになってくれてありがとう。これだけは伝えておくね」
僕は只野さんに認められていたんだと思い感謝の言葉だけを伝えていた。おまけじゃなかったんだって。
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