第43話 我慢ができない衝動に向かって



 僕は今井さんにそう告げるとコーヒーをまた一口飲んだ。そしてふぅと一息つく。向かいに座る今井さんも緊張が取れてきたのか良い表情になっているように僕には見受けられた。だからか僕と今井さんのわだかまりもなくなったかなあと安堵している僕がいた。


 そして思い出す大事なこと。話さないといけなかったと僕はふたりに


「あのさ。僕たちもう仲直りしたってことでいいんだよね? 」


 今井さんとの和解が上手く行ったことを確認するためにまずはふたりに尋ねてみる。その問いに


「うん。大丈夫なはず。春? どう? 」


 只野さんはそう言って今井さんに確認する。それに対して今井さんも


「うん。もう大丈夫。きちんと近藤くんと話ができたもん。それに私が言いたい事も伝えられたからね」


 そう言って僕と只野さんを交互に見てそう言ってくれた。その言葉を聞いて僕は良かったと安心しながらも、それならと


「だったら……僕たちってさ。もう別れて時間を過ごす必要なんてないよね? 元のようにみんなで一緒に過して良いんじゃない? まあ、アキも一緒に居ることになるけどね。あっそれともしかするとアキの友達も入ってくるかもしれない。今日話があって僕とアキふたりじゃなく真也も居るなら私も入りたいって言ってるらしくてね」


 と僕はふたりにまたみんなで過ごしたら良いんじゃないかと提案をしてみた。それを聞いたふたりは


「えーと。いいの? 千葉さんいるでしょ? それに友達も来るんだね。千葉さんの友達って誰だろう? でもそうだったら今までとは少し違うんじゃないの? 」


 と只野さんはやはりアキのことが気にかかるようだった。そして今井さんは


「……私、真也くんに告白しようとしているのに。私が振られちゃったらみんなが気不味くならないかな? 」 


 真也との関係が気になるようだ。確かに僕も今井さんに振られたことでみんなに迷惑がかかったら嫌だと思って離れたんだったなと思い返す。そんな悩むふたりを見て僕は


「アキについては問題ないよ。アキには元のようにみんなで過ごしてもいいかどうか尋ねて了解はもらってる。ただし、元に戻るからって追い出されたりしなければ良いよって条件でね。まあ、只野さんがアキのことが苦手だというのなら無理強いはできないけど。あと真也については今井さんに任せるしかないかなあ。こればっかりはね。僕も振られて離れちゃったし……。ただ、真也の側に居たいなら今井さんにはこれが一番かなあと思ってね。まあ真也にはまだ話していないけど反対はしないと思う。真也だし」


 そう言ってふたりに笑顔でそう告げる。ふたりは僕の話を聞いて急な提案だったからか悩んでいるようでそう簡単に返事を返せる様子ではないようだった。だからそんなふたりに僕は


「別にすぐじゃなくて良いんだし考えておいて。もうわだかまりもないんだったらあっちだこっちだって別れる必要なんてないと思ったから。僕からの提案だよ」


 と焦る必要はないからとふたりに考えておいて欲しいと告げたのだった。




 そうして喫茶店で行われた僕と今井さんとのわだかまりに関する話し合いは無事に終わることができ、そして元のように一緒に過ごす提案はふたり持ち帰りで検討するということとなった。

 喫茶店の前でふたりと別れ僕は家路へと向かおうとするもなんだか無性にしたいと思うことがあった。さてどうしよう……と考えながら身体の緊張をほぐすように僕は背伸びをし一息入れる。


 そして考えていてもしょうがないかと僕はある方向へと走り出す。


 家路へではなく別の方向へ。


 なんでだろうと思いながらも我慢ができない衝動に突き動かされて僕は無我夢中に望むものへと向かっていくのだった。






 



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