第76話 ダイニングで……父親と
目を覚ませば明るい時間となっていた。時計を見ると今は10時。昨日はあのまま寝てしまったのかと思いながら僕は起き上がる。
そしてスマホを確認してみると着信がふたりから入っていた。入っていたのはいつものアキとそして……真也。真也だとなにかあれば大抵は直接家にやってくるんだがと僕は考えるもとりあえずふたりとも部活があるだろうから夜にでも電話をするかと思いながらもベッドから降りる。
さて、喉が渇いたなあと僕はダイニングへと行くことにした。ダイニングに向かうと珍しくひとり父親がテーブルに居た。なんで珍しくかというと大体母親と一緒にいることが多いイメージな父親だから……。いや母親がくっついてると言ったほうが良いのかな。
「父さん、おはよう。ひとりでいるとか珍しいね」
僕はその考えを素直に付け加えながら挨拶をする。すると父親は僕の方を向いて苦笑しながら
「はははっ夏樹には俺はそんなイメージなのか。母さんと四六時中いるわけじゃないんだけどな。おはよう」
そう僕に答えていた。
僕はコーヒーをいれて……インスタントコーヒーだけどね。いれた後、父親の向かいへと座った。静かにコーヒーを飲む父親。それを見て僕はそういえば父親も僕と同じ状態だったんだよなあと言うことを思い出す。そのせいかどうも父親をジロジロと見ていたようだ。それに気づいた父親は不思議そうな顔をして
「夏樹、どうした? そんなにジロジロと見て」
と僕に問いかけてきた。
その問いかけに自分で考えないといけないことだけれど……参考に聞いてみるのもありかなあと僕は思い……恥ずかしながらも聞いてみようかという気持ちになった。
そして……うん、この際だと勇気を出すも恥ずかしそうに僕は
「いや……父さんってさ。好きな人に振られて。それから母さんに助けられて……その後付き合ったんだよね? 」
とまずは聞いてみた。それを聞いた父親は目をかぱっと開いて驚いたような顔をした後、頭を抱えると
「はぁ……なんで知ってるんだって母さんからだな? はぁ……ほんと困ったもんだ」
と僕に恥ずかしそうにそう答えるのだった。
しばらく頭を抱えていた父親だったが、顔を上げると真剣な顔をして
「まあ、夏樹がこのことでからかうような性格じゃないことはわかってる。なにか聞きたいことがあるってことかな? はははっ夏樹もそういうことで悩む歳になったってことだな。いいことなのか悪いことなのか……とりあえず聞こうか。何が悩みなんだ? 」
と僕に告げてきた。やはり父親。僕をわかっているというか。こんなことでからかうつもりなんてないし。ふたり仲良くしてくれたほうが良いんだから。それがなかったら僕が存在しないことになってしまうんだから。
大事なことなんだ……出会いってさ。
「あのさ。はっきり言うけど僕も今、同じような状態なんだ。それでさ。父さんに聞きたいのは母さんにはっきりと恋愛としての好意を持ったきっかけって何だったのかなって。それとさ。前の好きだった人から母さんへ好意が移り変わった際に罪悪感と言うか……そういうものを感じなかったのかなって」
僕は父親に僕が悩んでいることを伝える。父親がこのことについて考えたことがあるかわからないけれど……もし答えてくれるなら僕の参考になるなら……と。
まあ最後は僕自身で考える事柄だからあくまで参考だね。
すると父親は
「はははっ俺と同じようなことで悩んでいるんだな。わかった。少し長くなるかもしれないが時間はあるか? 」
と僕に告げる。その言葉に僕は無言で首肯すると父親は
「わかった。なら話すよ。まあ参考になるかわからないがな」
と少し笑いながら話し始めるのだった。
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