第75話 考え事



 僕は今家にひとり。

 自分の部屋のベッドで寝転がって物思いに耽る。

 両親はいつものようにふたりでお出かけ。けれど僕をほったらかしにしてもいいと思ってるわけではない。昔は僕も一緒にでかけていたのだから。

 けれどさすがに両親の仲の良さに僕はついていけなくて。中学の頃に「ふたりで出かけてほしい」とお願いしたんだっけ。

 最初の頃は両親も渋ってはいたけれど……ね。

 まあ僕としてもふたりの仲が良いほうが良いのだから。というよりこういうふたりに僕もなれたらなんて思ったりもしたことがあるなあ。


 僕はベッドの上でいろいろと考え事をしていた。今日あったことやこれからのこと。


 今日只野さんと会って僕は何も考えていない……いや考えようとしていなかったことをとても身にしみて感じていた。只野さんは僕の返事不要についてきちんとした理由があった。そしてこれまで言えなかったことや伝え間違ったことをたくさんと抱えていて僕のことをたくさん考えていてくれていた。僕としたいことなんて願望も持っていた。

 それなのに僕は……返事をしようと考えたのも四季さんとの会話から気づいたことで決して僕自身で考えついたことではない。それに只野さんから告白を受けたときにきちんと見ようと考えたけれど、そう見ていたわけでもない。

 というよりなぜそう考えたのかさえ今はちっょと違うような気さえしている。というのも人を好きになるって相手を見ようとして感じるものなのかってこと。自然と見てしまい溢れ出るものじゃないのかと。


 なぜそう思った?


 それは……今の僕はアキばかりを見ていたと気づいたから。


 本当になにしているんだろうと思う。


 今日只野さんと会って僕は……只野さんには申し訳ないけれど、僕が好意を持っているアキをもっと見ていきたいと思う。自然と見ていたアキを。




 けれど……ね。アキに好意を持ってはいるんだ。わかるんだ。でも今井さんに持っていた好意と違うんだ。

 今井さんに持っていた好意は直線的? そんな感じな気持ちだった。けれどアキに対してはふわっとした感じ? それが異性に対する好意なのか……あまりにも違いすぎてよくわからないんだ。


 どうやったらわかるんだろう。何に気づいたらわかるんだろう。


 


 そして最後にひとつ。


 つい最近まで僕は今井さんが好きだった。けれど振られたからとすぐにアキへと向いてしまったとしたら……そんな僕だったら。

 

 そんな簡単に気持ちを切り替えられるとしたら……僕は人を好きになる資格なんてあるのだろうか。




 そう言えば父さんも僕と同じような感じだったんだよなあ……




 多くのことを考えて今日という日が終りを迎える。

 

 いつの間にか眠った僕によって。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る