第67話 本当の言葉



 優しい笑顔で僕に微笑んでくれた四季さんだったが、急に何を思ったか不満そうな顔に変えてしまう。そして


「ふらふらしている人って多いのよね。例えばね、私に告白した後に即アキに告白するとか。それも振られてすぐにね。あれ? これってふらふらって言うのかしら? ただ、そんなの本当に好きになったと言えるかしら? って思わない? それにね。私とアキの間でそんなの話はすぐ伝わるわよね。何を考えているのかしら? 」


 とそんな事を口にした。振られてから次に……という面ではふらふらとは言えないのかもしれない。それでも振られたから次へと即切り替えられる気持ちを本当に好きと呼べるのか? そういう面では同意できると僕も思った。


「そんな軽い気持ちを私……それにアキもね。嫌なのよ。もう。ふらふらするのもきちんとひとりの人を好きになっていないからじゃないのかしら? 私はそう思うから。あっ別にアキを好きになれと言っているわけじゃないのよ。それだけは言っとくわ。別にアキを振るのは構わない。だってそれは仕方がないことだから」


 四季さんは続けて僕にそう告げてきた。四季さんは確かにアキの味方ではあるけれど無理強いとかするわけじゃない。きちんと向かい合えと僕に告げたかったのだろう……ふたりの間でふらふらするのではなくひとりの人と。

 四季さんとアキに告白した人たちと同じようにならないようにと。


「うん、わかったよ。にしてもふたりはやっぱりモテるんだなあ」


 そんな四季さんの言葉に返事を返すもふたりはモテるんだと改めて感心して思わずそう言葉を漏らしてしまう。すると


「へえ、近藤くんからそう言われるとはね。ふふふっ。ならもう一度聞いてみましょうか? 私のことどう思う? 」


 そう四季さんは最初に会ったときのように尋ねてきた。ふぅ……今回はちゃんと見て……


「綺麗だと思いますよ」


 と素直にそう答えた。すると


「へぇ。今回はそう答えるんだね」


 と四季さんは驚きはしていないが僕にそう告げてきた。だから


「そりゃ知らない人じゃないんだから聞かれたらきちんと考えるよ。ただ、好みかどうかとは関係ないから。綺麗だから、可愛いから好きだとか好みだとかそういう風になるとは限らないよ」


 僕は思っていたことをまた素直に答えた。すると四季さんは今度の言葉に驚いたようで


「まさかそんな言葉が続くとは思わなかったわ。それって綺麗だけれど好みじゃないよって私に言っているようなものよ。はぁ……やっぱり近藤くんは面白いわ」


 そう言って笑う四季さんは嫌な顔になったというより楽しそうな顔をしているようだった。

 そして


「今までアキだけだった。うわべじゃない本当の言葉をぶつけてくれるのって。でも……近藤くんもそうだよね。ほんと……だから私も楽しいんだろうな」


 と四季さんは最後にそう呟いたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る