第66話 四季さんの助言



 さて、四季さんはこれから僕へ話したかった本題へと入るらしい。四季さんは僕とは違う視点を持っているし、ズバッと痛いところをついてきたりしそうな感じで僕は少し怖かった。そんな考えを持ったせいか僕の気持ちが表に出てしまったのだろう、少し顔がこわばっていたらしい。


「ふふふっそんなに緊張しなくてもいいわよ。ただ、今日ここで話してみてやっぱり言っておかないと駄目だって思ったわ」


 四季さんは僕の顔を見ながらそう言った。今話したところで僕に駄目なところがあったらしい。まあ僕に駄目なところなんていっぱいあるから仕方ないのだけれども。


「じゃ、話すわね。もういろいろと前置きなしに話すけれど……アキに対してふらふらしないでほしいってことね。まあ当たり前のことだわ。相手に対して二股のようにふらふらしたら駄目だわ。そう当たり前のことを伝えただけ。今日話してみて思ったのは近藤くんって身内以外には結構辛辣だけれど、身内になると相当甘くなるのよ。私に対してもさっきの言葉のように甘かったり……。初めて会ったときには冷たく突き放されたのにね」


 そう言って少し笑いながら僕に告げる四季さん。ふらふらしない……か。これって完全にアキと只野さんとの間でってことだよなと流石に僕は思いついた。おまけにふたりとも身内。甘くなって断ったりできずふらふらしないかって心配もあるんだろうか? 一応只野さんにはきちんと伝えようとは考えていた。返事を。でも身内に大して甘い……きちんと伝えられるのか?

 それでも四季さんの言うようにふらふらするつもりはない。というよりひとつ迷っていることがある。だから


「四季さん……助言ありがとう。ふらふらするつもりは毛頭ないよ。ただね。四季さんはアキの友達でアキの味方……何だよね? 」


 僕は四季さんにまず前置きとしてアキとの関係について尋ねてみた。


「ええ、そうよ。私は誰よりもアキの味方。アキは私の大事な友達。唯一……のね」


 そんな僕の問いに四季さんは即返答してくれた。そりゃそうだよね。四季さんの答えはわかっていた。ただ唯一のと言われるとは思っていなかったけれど。


「だったら……僕がアキを好きになっても良いのかな? ちょっと前まで今井さんが好きで振られて落ち込んでいた僕が……」


 そう、そんな簡単に心変わりをしてアキを好きになっても良いのかってこと。安易すぎる気がしていた。吊り橋効果になっているのかもしれないって思ったりもした。いろいろと考えていた。うん、この考えもアキを好きになる歯止めになっているのかもしれないとは考えていた。だから……一番の味方の四季さんに尋ねてみることにしたんだ。


 そんな僕の問いに


「そんなのは関係ないから別に良いわよ。人を好きになる、嫌いになるってやっぱりなにかしらあってなるものだと私は思うわ。それがただ今回は近藤くんが失恋して……という結果になっただけよ。それに近藤くんにまだ今井さんへの気持ちが残っているのなら論外だけれど違うでしょ? ただね、さっき言ったように二股かけたりふらふらしたりアキにふさわしくないって思ったら近藤くんでも排除するつもりではいるわよ? 」


 そう言って笑いながら僕の問いに答えてくれた四季さんだった。そして


「それにね、一番はアキが自分から近藤くんを気に入ったってこと。これが大きいのよ。あの子が誰かに興味を持ったのは初めてかもしれないから。だから……そんな相手の近藤くんに頑張ってほしいからこんな助言をしたのかもね。ほんと……頑張ってよね? 」


 と僕に告げ優しく微笑むのだった。

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