第63話 ふたつの話
放課後いつものようにアキが大きな声で僕の教室へと飛び込んでくる。そんなアキにクラスメイトはもう慣れたのか「ああ……いつものだな」とあまり気にしなくなっていた。
「なっつきくーーん、今日もお疲れーー」
そう言って飛び込んできたアキにさすがの僕も恥ずかしさや驚きを感じなくなっており
「ああ、アキもお疲れ。今日で今週も終わり、また来週だね」
そう自然と答えていた。そんな僕にアキは少し不満顔をして
「そうなんだよね。土、日と夏樹くんに会えないのは残念なんだよなあ。でも私も部活があるし……仕方ないか。そうだ、今度試合があるときにでも応援に来てもらおうかな? 」
会えないからとそんな案を出してきた。なんだ、不満なのはそのせいかと僕は少し笑ってしまう。まあ休日もアキは頑張っているからなあ。会えないのも仕方ない。そう考えるとアキが言う応援に顔を出してもいいかなと僕は考える。だから
「ちなみに今度の試合は決まっているの? 」
それならと僕はアキに試合がある予定を聞いてみると……
「ごめん。まだはっきりと決まってないの。もしかして来てくれる? それなら決まったら教えるね? 」
と嬉しそうに話してくれた。そんな話をしていると
「それなら俺が試合の時も応援してくれよな? 」
そう言って現れたのは真也。昼休みの四季さんとのやり取りから教室へ戻ってきた後、ひとり静かにしていたので僕は気を使って声をかけなかった。けれど今の様子だと元気になったようだ。そんな真也に
「ああ、真也も応援するよ。その時は教えてよ? 」
と僕は真也にもそう伝えたのだった。
そんないつものようにアキと真也、僕と3人で帰り際に話をしているとひとりの女性が僕たちの元へとやって来た。それは只野さん。
「夏樹くん、千葉さん。そして真也くんお疲れさま。急にごめん。えっとね、近藤くんと千葉さんにちょっと話があるの」
只野さんは僕たちに近づくと少し不安そうな顔でそう言ってきた。只野さんから僕達に話とはなんだろう? と不思議そうな顔をしていると
「千葉さん、明日だけど近藤くんを貸してほしいの。夏樹くん予定ある? なかったら私に付き合ってほしいんだけれど? 」
只野さんは明日僕に付き合ってほしいと告げてきた。というかアキに許可を取るって僕から言うとよくわからないんだけれどね。
只野さんもアキに気を使っているのだろう。只野さんは僕に告白もしているわけでアキにライバルって言われていたしなあ。
そして只野さんが不安顔で来たのは断られることに対してなのかもしれないと思っていると、直様その言葉にアキは
「うん、いいよ。夏樹くん、予定がないなら只野さんに付き合って。私は学校でいつも一緒に居るからね。まだこっちに合流していない只野さんが不公平だもん。まあ羨ましいとは思うけど……はぁ、私も休日に会いたいなあ」
と只野さんの申し出はすんなりと受け入れていた。けれど別の意味で落ち込み気味だった。
たしかに先程も話していたとおり、アキとは休日会えないからね。まあ休みができたらどこかしら誘うかと考えつつも
「明日はなにもないよ。わかった。それなら後で予定を教えてね」
とアキが受け入れたからと僕もすんなりと受け入れたのだった。その言葉を聞いた只野さんは嬉しそうな顔をしつつもちょっと複雑な顔をしていた。複雑な顔をしていたのはアキの言葉に対してかなあ……うーーん、よくわかんないね。
そんな話をしていれば結構な時間も経つもので、僕は
「アキと真也、部活大丈夫か? それと思ったけれど四季さん今日は来てないね? 」
時間を心配してふたりに告げつつも今日は放課後に四季さんを見ていないことに気付いて続けてそう呟いていた。
そんな僕の発言にある方向から反応が返ってきた。
「あっ今来たところよ。近藤くんお疲れさま。一応私の心配もしてくれるのね」
そう言いながら静かに歩いて現れたのは四季さん。
「「四季は後で来てね。先に行ってる」なんて言っちゃってアキは私を待っててくれないのよね。ほんとにもう。ちょっと用事があったから遅くなったわ。それと私、近藤くんにお願いがあるの」
アキは四季さんをどうも置いてきたようだった。少し不機嫌気味な四季さんをアキは見ると頭を掻きながら視線を反らしていた。
ちなみに真也も四季さんを見ると視線を反らしなにか考え事をしているようだった。うーーん。真也は大丈夫なんだろうか?
そして四季さんは僕にお願いがあるらしい。うーーん。なんか毎日色々とあるなあと思いながらも
「えーとなに? 」
と四季さんへと尋ねると
「ちょっと今から話があるんだけれど」
どうも僕に話があるらしい。なんだろう? 今日真也と話をしていたからそれ繋がり? まあ考えていてもしょうがないと
「うん、いいよ。別に用事ないから」
僕が返事すると横から
「四季、近藤くんに何するつもりよ? 」
と只野さんに対してとは違いすこし慌てたように四季さんへ告げるアキ。そんなアキに呆れたような顔をして
「そんなに慌てなくても大丈夫よ。別に告白したりとかじゃないから。アキから取んないわよ」
そう言いながらも怪しく笑う四季さん。うーーん、ほんとこの人は何考えているかわかんないからなあ。そのせいかアキもいろいろと思うところがあるのかもしれない。
でも仲は良いんだよね、このふたり。面白い関係だよ、ほんと。
四季さんが現れてから真也と只野さんはなにか置いてけぼりを食らった感があったけれど、もう時間がないとアキと真也が部活に行くと挨拶して向かえば只野さんも「また明日ね」と言って今井さんの元へと帰って行った。
そして最終的に僕と四季さんふたりが残った。
「明日って何? 」
四季さんは只野さんの言葉に気になったのだろうそう聞いてきた。だから僕は
「今から話があるんでしょ? その時話すよ。どこで話す? 」
そう返す。その言葉を聞いた四季さんは腕組みして少し考えた後に
「屋上行きましょうか? 」
と僕もよく使っている屋上という提案を出してきたので僕も了承するのだった。
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