第22話 なんでわかるかなあ



 今井さんとの遭遇で残りの休日、僕は自分が何をしたのか曖昧なほど頭の中が混乱してしまっていた。それでもなんとか休日を乗り切りきって今、僕は学校に来ていた。

 朝みんなが挨拶を交わし合っている中、僕は席についてひとりぼーっとしていた。というより何もする気が起きないと言ったほうが正しいかもしれない。けれどしばらくすると今日も僕なんかと一緒に居たいと言ってくれるアキの明るい声が聞こえてきた。


「ぐっもーにんっ(Good morning! )」


 そんな無理に英語使わなくてもいいのにと僕は少し笑いながら


「アキ、おはよう」


 そうアキに挨拶を返す。そんな後ろから


「千葉さん、速いって。夏樹おはよう」


 そう言って真也もやって来た。その言葉にアキは少し頬を膨らませて


「別に島田くんは慌てなくて良いんだよ? 私は隣のクラスだし一緒に居る時間があんまりないんだから。早く会うためには走るしかないでしょ? 」


 と不服そうに真也に言い返していた。そんなアキを見ているといつもどおりでなんだか癒やされるなあと思いながらも


「真也、おはよう。そんなに無理してアキに付き合わなくていいのに。振り回されるよ? 」


 と僕は真也に挨拶とともにそんな事を笑いながら伝えていた。それを聞いたアキは


「え? 夏樹くんまでそんな事言うの? ちょっとひどいよ」


 とまたまた頬を膨らませながらも少し笑いながら僕に言ってきた。その会話で真也は


「あれ? 夏樹。千葉さんのことアキって呼び捨てにしてたっけ? 」


 と不思議に思ったのだろう僕に聞いてきた。ああっそう言えば休日にアキと会ってから変わったんだっけと思い出す。だから僕は真也に伝えようとするも、アキが先に


「うん。変えてもらったの。「アキ」って呼んでって頼んでね」


 と嬉しそうに真也に返す。それを聞いた真也は驚いてはいたものの、直ぐに


「えーなら俺も千葉さんじゃなくてアキさんって呼んじゃ駄目なの? 」


 とアキさんへ名前呼びをしたいと頼んでいたのだが……


「だめーー。名前は夏樹くんだけーー」


 とスパッと断った。あまりにも早い断りでそれを聞いた真也は


「はぁ……ほんと千葉さんは夏樹だけ特別だよな」


 とちょっと不満そうにそんな事を言っていたのだった。




 僕がそんなやり取りをしていたふたりを見ていると何を思ったのかアキは僕の方を向き、いきなり手で僕の頭を両端から挟み僕の顔を見ながら


「夏樹くん、昼休み話があるから」


 と急に真剣な表情に変わって僕に告げた。そして


「島田くん、そういう事で昼休みは一緒に食事できないから。ごめんね」


 と真也にもそう断りを入れていた。僕も真也もいきなりで訳がわからない。


「アキ? どういうこと? 」


 僕はアキに理由を確認するため、そう尋ねてみると


「夏樹くん。ぴーーんだよ、ぴーーん。わかっちゃった。だから放課後は無理だから昼休みに話をしようね」


 といつものぴーーんが出てきた。というよりもしかして前みたいに僕が悩んでいるのがわかったのかなとちょっと吃驚しながらも、もしそうならほんとアキには隠せないよなあと


「ぴーーんね、わかったよ。昼休み話するよ。はぁ……なんでわかるかなあ」


 と僕が呟くと、アキは直ぐに


「そりゃ夏樹くんのことだもん。分かるよ」


 と言って僕にいつもの笑みをくれるのだった。




 けれど流石にこの会話についていけない真也。


「ちょっと意味がわからないって。まあ何かあったみたいだからとりあえず昼休みは別で食事をとるよ。というかまだこっちに来れないしな。向こうと話が終わってないし。でもぴーーんってなんだよ? それに夏樹。なにかあったのか? 」


 と真也は困惑しながらも僕の心配もしてくれた。けれど今回の話は真也には内容が内容なので今は話したくないこともあり


「大丈夫だよ、真也ありがとう。ちょっとアキと話をしてくるよ」


 僕は真也に誤魔化すようにそう謝るのだった。

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