第51話 吹っ切れた
「なんでこんな座り方なの? 」
僕は思わずそう言ってしまった。真也にしても僕を見て頭を抱えている感じになっていた。というのもなぜかアキと大和さんに挟まれて僕が座っていたからだ。いや、アキが僕の横に来たがるのはある程度わかる。けれど大和さん……あなたはなぜ?
「別にいいでしょう? 私も近藤くんの横に座りたかったから。ただそれだけよ」
と平然とした顔で左側に座る大和さんは言う。それを右側に座るアキはジロっと見ながら
「別に四季は離れて座ってもいいでしょ? 私だけでいいのに。 離れなさいよ」
と大和さんに文句を言うが、大和さんはそんな言葉を気にする様子もなくスルーしていた。このふたり、いつもこんなやり取りなのか? それにしても、はあ……ほんとこの人はよくわからないや。そんな呆れていた僕に大和さんは
「早く島田くんに説明しないと時間がなくなるわよ? 昼休み、時間は有限よ? 」
とアキの話を逸らすかのように僕に説明するよう勧めてきた。確かにそうなんだけど……
「はぁ。夏樹、もういいから始めてくれ。多分きりがないから」
そんな僕に真也も説明するように言ってきたので、僕は諦めて今までのことを説明し始めたのだった。
どこまで話そうか僕は結構悩んだのだけれど、真也には僕については全て話してもいいやと考えていた。そう、只野さんが僕に告白したことや今井さんが真也を好きなことは除いて……ね。
只野さんと揉めたけれど仲直りしたこと。
今井さんとも昨日きちんと話をして意思疎通を図ったこと。
ふたりときちんと会話したことでわだかまりがなくなったこと。
そして、もう問題がないのなら……
「僕と今井さん、そして只野さんとの間にあったわだかまりがなくなったんだから、またみんなで過ごそうかって話をしたんだ。まだ返事はもらっていないけれどね」
僕は真也にそう説明した。その言葉に真也は苦虫を噛み殺したような顔をしていた。なにかいいたい事でもあるのだろうか? そんな中アキと大和さんは僕の説明を邪魔しないように終わるまで静かに黙って聞いていてくれていた。
ここまで話し終え僕は真也の言葉を待つ。そんな中しばらく間があった後
「いろいろとあったんだな。まあ解決しているのならなにか言っても今更だけど……ただひとつだけ。なあ、もう春のことはいいのか? 」
真也は僕にこう尋ねてきた。うん、真也はこのことが一番気がかりだったんだろうなって思う。振られたのにまた一緒に過ごそうと言う僕を心配してくれているのだろうと。だから
「ああ、もう大丈夫。すっきりしてる。もう吹っ切れたよ」
僕は真也に笑顔でそう言葉を返す。うん、これは本音だ。本当にもうなんともない。これもアキが側にいてくれることがわかっているからだろう。そんな考えが浮かんだからか僕はいつの間にかアキの顔を見ていた。そんな僕の顔をアキも見返して微笑んでくれた。そして
「島田くん。もう夏樹くんは大丈夫だよ。だって私が側にいるから」
とアキもそう真也へと言葉を告げていたのだった。
真也はそんなアキの顔を見てなにかひとり呟いていた。ただそれは聞くことは叶わなかった。そして
「そっか。すっきりしたんだな。なら俺からは何も言うことはないよ。ただ、ふたりはどうするんだ? 関係あるって言ってたのは今後のことか。千葉さんと大和さん。だったらもううちのクラスには来なくなるってことかな? 」
と真也が僕らに言うと、慌てた顔をして
「待ってよ。なんでそうなるのよ。私は今後も来るわよ」
とアキが真也の言葉を打ち消すようにそう言い返した。そして
「アキが来るなら私も来るわよ? 別にふたりがこちらに来るからって私達が来たら駄目ってことはないでしょ? 」
と大和さんも真也にそう告げていた。そんな大和さんの言葉に
「四季。あなたは来なくてもいいのよ? 」
アキはそう告げるのだが
「私も来るわよ。というよりもアキがいなくても行くと思うわ。面白そうだし」
となにが面白そうなのだろうか? よくわからないが大和さんはそんな発言をした。ああ……本当にこの人何をしでかすつもりなんだろうと僕は心配になってきた。そんな頭を抱える僕を大和さんは見て
「別に何もしないわよ。そんなに困った顔しないでくださいな」
と悪戯をしているようなそんな笑みで僕に微笑みかけてくるのだった。
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