第52話 鈍感
真也への説明は特に問題なく終わることかができた。真也がどう考えているかよくわからなかったこともありどうなるか少し不安はあったけれど、よくよく考えてみれば今井さんと只野さんのことで大きな問題があったのは僕だけなわけで。他の3人にはちょっとしたしたことはあるかもしれないけれど向こうが受け入れてくれるのなら特に問題らしいことはない気がした。
そうしてみんなも昼食を取り終わったので残りの時間はどうしようか考えていた僕に
「近藤くん、ちょっと話があるんだけど」
と大和さんがそう僕に声をかけてきた。
「うん? なに? 」
僕は大和さんに何事かと返事をすると
「ちょっとふたりでね。一旦解散しましょ」
とみんなと一緒に話すのはちょっと困ることのようだった。なので解散をして欲しいと告げてきたので
「うーん、わかった。ならごめんけど今日はもう解散しようか? 」
と僕がみんなに問いかけると
「ああ、わかったよ。なら先に教室に戻っておくよ」
と真也は素直に返事をしてくれたのだが、そんなことは許さないとアキが
「なにこそこそと話そうとしてるのよ? 私にも言えないことなの? 」
と大和さんへと強い口調で迫っていた。そんなアキを見て大和さんは呆れた顔をしながらも
「はぁ……わかったわよ。アキも居ていいから。島田くん、ごめんね。ちょっと話をするから近藤くんを借りるわね」
と真也には先に帰ってもらうようお願いをしたのだった。
「はぁ……ほんとにもう。アキ、そんな大した話じゃないのに……アキから取ったりしないわよ。今のところはね」
とまた最後に意味深なことを言ってアキをからかう大和さん。それに対してアキは
「すぐそんなことを言うから信じられないのよ。いや……信じているけどさあ。やっぱりやなんだよね。四季と夏樹くんがふたりで居ると。只野さんなら別に大丈夫なんだけど。はぁ……よくわかんないや」
とアキは自分の気持ちがよくわからない、そんな感じで大和さんへと言葉を返す。
「私とアキの仲で抜け駆けなんてするわけないじゃない。本当に心配性よねえ。あっ近藤くん、話のことなんだけどね」
とアキにそう言いつつも僕へと話を振ってくる大和さん。そんな大和さんに
「うん、話だよね。なに? 」
と僕は何の話かわからないのでとりあえず大和さんへと尋ねる。すると一言
「近藤くん、気づいてる? 」
と大和さんから尋ねてきた。「気づいてる? 」といきなり言われても僕にはさっぱりだった。だから
「ごめん。何が気づいてる? なのかさっぱりわからない」
と僕は素直に返事を返すと、大和さんはやっぱりねという納得した顔をして
「アキ、本当に近藤くんって鈍感だね。わかってないみたい。アキは気づいてる? 」
と今度はアキに同じ言葉を振っていた。するとアキは
「多分……言っていることはわかっていると思う。そうだと思うかな? 断定はできないけれどね」
とアキは大和さんへとそう返事を返していた。ってアキはわかっているんだ……僕って鈍感なのか。さっぱりわからないや。
「僕ってやっぱり鈍感なわけね。はぁ……ふたりの会話、さっぱりだよ」
僕は少し落ち込んだ様子でふたりにそう言葉を伝えると
「うーん、私はそういう夏樹くんが良いから気にしないでいいと思うよ? 」
とアキがそう僕をフォローしてくれた。こんな僕で良いのか? うーん、よくわかんないな。
「気づいていないならそのままでいいんじゃないかな? 近藤くんがなにかする必要もないわけだし。ごめんね、念の為にちょっと確認しておきたかったのよ」
と大和さんは落ち込ませたと少し申し訳無さそうにそう僕に告げてきた。そして
「どうするの? 」
とアキの方を見て大和さんはそう尋ねていた。僕はもうわからないのでただ話を聞くのみだ。
「はっきり言うだけかな? 」
とアキは大和さんへと返す。
「なにをはっきり? 」
大和さんは具体的に何かを尋ねるとそれに対してアキは
「気持ちかな? 」
そう言って僕を見て微笑むアキであった。
うーん、結局最後までわからなかった僕。というか僕に話があるということだったけれど結局話をわかりあったのはアキと大和さんということで。僕は大和さんに言われた「鈍感」という言葉をしっかりと噛み締めるしかなかったのだった。
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