第53話 ひとり思案
昼休みも終わり、僕達は別れ自分の教室へと戻った。そして自分の席に座ると
「無事に話が終わったか? 」
と僕の席まで真也がやってきて声をかけてきた。その言葉に僕は
「とりあえず終わったけどね。ただ……んーー僕にはわからなかった」
と困惑した顔をして真也にそう言葉を返す。内容に関してはわざわざ僕だけに話そうとしたわけだから真也には言えない……と考え言葉を選んで話したつもりだ。
「うん? 夏樹に話があったんだよな? それでわからない? 」
真也も僕を不思議そうに見つめながらそう返してきた。はぁ……確かに真也がそう思うのも仕方ないよなあと思うも
「まあね。ただ、わかんないならわかんないほうが良いって言われたし……仕方ないと割り切るしかないかなって。まあそういうことだよ。気にしないでよ」
と僕が真也にそう答えると真也もこれ以上突っ込んでも仕方ないと思ってくれたのだろう
「ははは。わかったよ。それに俺が根掘り葉掘り聞いたら駄目だろうしな。ちょっと気になったから声をかけてみただけだから。まあ気にするな。おっとそろそろ席に戻るな」
と昼休みも終わりそうな時間になっていたため、そう言った後真也は自分の席へと戻っていったのだった。まあ真也も気になったんだろうなあ……ああ言いながらも。
昼からの授業を受けながら僕はぼーっと昼休みのことを考えていた。とりあえず真也への説明も終わり、後は放課後の今井さんとの会話次第でまたみんなで集まることができるかどうかが決まるかなあ……そんなことを思っていた。
今回、バラバラになったのは結局僕のせいかなあと思う。今井さんへの2度目の告白で振られた僕は何も説明せずみんなの輪から飛び出した。ここできちんとわかり合うことをなにかしらしていればここまで複雑になることはなかったのかもしれないと今更だけど思ってしまう。
けれど、もしそうだったら……
きっとアキと出会うこともなかったのかもしれないと思うとそれも嫌だなと思う僕がいた。良いことではなかったけれど僕にとってアキと出会うことはとても大きなことだったんだなあとこうやって考えていると気づいてしまう。
だから今僕が一番優先しているのは多分アキのことだと思う。けれど、只野さんのこともきちんと考えないといけないと思う。告白されたのに知らないふりはできない。たとえ返事はいらないと言われたとしても最終的にははっきりとした意思表示は必要だろうって。
にしてもぼくって鈍感なんだなあ……やっぱり。大和さんの言葉の意味が全くわからなかった。アキはわかったのにね。でもアキの言葉から言えばアキにも関係あることのようだった。そして僕にも? なんだろう。只野さんのこと? 僕にはふたりが関係する人って只野さんしか思いつかない。でも何に気づく? さっぱりだなあ。
そして大和さん。まだ数日しか会ってないのになぜそんなことを言えた? 洞察力があるんだろうなあ。生徒会をしているだけあるってことかな?
アキに大和さん。このふたりは僕にとってほんと凄い人だと思えた。アキは僕を理解してくれる。大和さんは全体を見渡す洞察力があって。そして気遣いもある。そんな近くに鈍感な僕。ついていけてないなあと少しおかしくなってしまった。
そんな笑いを見せる僕に
「なにかおかしいところがありましたか? 近藤くん」
と授業をしている教師から注意を受けてしまう。だから少し困った顔に変えて僕は
「いえ、なにもありません」
と返事をする。すると教師は
「なら授業に集中してくださいね」
と言って黒板へと向き、授業内容を書き込んでいく。はぁ……みんな見てるし。真也は笑ってるじゃない。
さてと授業をちゃんと受けよう。
まずは放課後の今井さんとの会話だ。
みんなで仲良く過ごせるようにまたなれると良いな……
そう考えるとまた注意されないように授業に集中する僕だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます