第40話 今の僕がある理由



 更に話を続けようとした今井さんだったのだが、その前に


「ごめんね。ちょっと興奮しちゃった。落ち着いたと言ってもやっぱり思い出すのはあまり……ね」


 と話でちょっと興奮してしまったことに対して申し訳無さそうに僕たちに謝ってきた。ううん。そんなの仕方ないから。嫌なことを思い出せば誰だってそうなるさ。


「気にしなくていいよ。だれでも嫌なことは辛いさ。そうだね。じゃ今度は僕が話そうか? 僕がどう思っていたか。どう考えていたかをさ」


 だから落ち着く時間があったほうがいいかなと話を続けようとしていた今井さんを一度止めて僕から話を始めることにしたのだった。




「今井さんを好きになって……1度目告白した時、確かにまだチャンスはあるかもしれないと思った。決まった人がいるわけじゃないと思ったから。でも……2年に上がって、ああ……今井さんは真也が好きなんだなって見ていてわかったよ。申し訳ないけどバレバレだった。ただ、1年のときは僕も真也と同じクラスじゃなかったからなあ。2年になってみんなで一緒に過ごすようになるまで気付かなかった。でも、それに気付いたらさ。しんどくてしんどくて……。だから僻みや嫌な気持ちが無い純粋な気持ちのままで告白したいなって。振られるってわかっていても……さ。ってその時はそんな事を思ってた。ふぅ……まあ、僕ははっきりさせたかったのかもしれない。今井さんに好きな人が居るってことを。僕じゃ駄目なんだってことを。望みなんてないんだって」


 僕はここで一旦切り、コーヒーを一口含み喉を潤す。こういう話って結構緊張するものだと、さっきまでの今井さんも同じだったんだろうなと思いながら。

 ふたりは僕の話を黙って聞いてくれていた。だから僕は続けてまた話し出す。


「僕って今井さんばかり見て周りを見ていなかったんだなって。ううん。そうじゃないな。今井さんさえ理解できなかったんだよな。今思うと僕って何を見ていたんだろうね……。そりゃ今井さんに嫌われることになっても仕方ないよ。はははっ、今井さんの話を聞くまで僕が居ることで今井さんが困る事があるなんて全く理解していなかった。確かにそうだよね。好きな人の友達に冷たくしてしまったら、好きな人からの自分の印象に悪影響を受けるかもって心配になるよね。それに……只野さん。ごめん、全くわからなかった。そりゃ今井さんも気を使うよね。確かに真也の好きな人を僕が知ってしまったらその人に気を使うと思うなあ。こればっかりは仕方ない。友達大事だもんね。そして……僕って他人、いや友達だね。友達のことを全然理解できていなかった。いや、理解しようとしていなかったんだなって。これが僕の一番悪かったことなんだなあってそう思うよ」


 僕は黙って聞いてくれているふたりを見てもう少し話してもいいかなと考え話を続ける。


「ふぅ……そういえば僕は今こうして落ち着いているけれど、やっぱり僕も泣いたよ。恥ずかしながら。1度目は真也に見られて……2度目はアキに見られたから。いや違うな。アキは僕が泣けないことに気付いて泣かせてくれたが正しいかな? 2度目に振られた時、僕も感情がよくわからなくなっててね。確かに悲しい気持ちはあったけどぽっかりと穴が空いたみたいになってた。僕は振られた拍子に壊れて無くなったものかと思ってたよ。でも違った。穴が空いたように感じていただけで感情を押し殺していただけだったんだって。それをアキに見つけられて泣かされた。はははっ情けないったらないね。でも僕が元気なのはアキのおかげ。多分今井さんのようにならなかったのはアキと出会ったから。会わなかったら僕も同じ様になっていたかもしれない……かな? 」


 僕が話し終えると只野さんが少し悔しそうな顔をしていた。もしかして僕とアキの関係や僕の側にいなかったこと等でなにか思ったのだろうか? 只野さんは告白までして僕に思いを向けてくれているのだから、アキのことを面白く思わないのは流石に僕もわかっている。でも、アキがいたから今の僕があるというのはやっぱり伝えないといけないことだと思ったから。


 なぜアキが僕の側にいるのか? ということに繋がると思ったから。

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