第41話 今井さん 話の終わり



「僕としてはこんな感じかな。まあなにか聞きたいこととかあったら後で聞いてよ」


 僕は伝えたいことを言い終わるとコーヒーを一口飲んでからふたりにそう伝えた。只野さんは先程と変わらず悔しそうな顔をしていたが、今は僕と今井さんの会話だからなのか僕に何かを言ってくる気配はなかった。今井さんは僕が言い終わるとまた少し緊張めいた顔をしてから


「近藤くん、ありがとう。近藤くんが考えていたことがわかってよかった。一番心配だったのは私がひどいことを言って嫌な思いをして居るんじゃないかだった。いえ、嫌な思いをしないはずはないんだけど……私、勝手なことばっかり言ってるなあ」


 と僕にそう告げてきた。それに対して僕は


「もう気にしなくていいよ。僕の行動も駄目だった事いっぱいあるし。それにさ。こうやって会話してふたり理解し合おうとしているんだから。後悔よりも今後どうするかのほうが大事だと思うよ? 」


 と今井さんにもう後悔よりも先を見ようと促した。すると


「わかった。とりあえずまだ私の話が終わってないから……今度は私が話すね」


 と今井さんは僕に告げ、先程の続きを話しだしたのだった。




「それから近藤くんから告白を受けて……今度は好きな人がいるからと私はきちんと断ることができた。はずなんだけどそれからいろんな事が起きだして。まず近藤くんが私達から離れて。そのせいで冬が心配そうにしだしたわ。次に近藤くんが心配だからと真也くんが私達から離れるって言い出して……私は止めに入ったわ。離れたくなかったもの。それから今度は冬が「近藤くんに戻ってきてと伝えに行く」って声を掛けに言ったけれど……失敗しちゃって。遠くから見ていたけれど近藤くんに対してのいつものツンがでちゃってた……ね。だから冬は戻ってきて失敗しちゃったって落ち込んでいたんだよね。おまけに翌日から千葉さんが現れるようになって。冬は我慢できなくなって屋上に呼び出して確認して……その後泣き崩れていたわ。「千葉さんに取られちゃった」って。そのせいかなんでもう千葉さん、別の人に手を出してるの? って近藤くんに嫌なイメージが付け加えられちゃった」


 そう言った後、オレンジジュースをまた一口飲む今井さん。そこで


「ちょっと待って。私のせいで近藤くんに迷惑かけてたの? 」


 と只野さんが急に今井さんに問いただす。それに対して今井さんは


「近藤くんに嫌なイメージって冬の事で付いたことが多かったよ? 」


 と素直に伝えていた。それを聞いた只野さんは僕の方を見て


「近藤くん……なんかごめん。私も迷惑かけていたみたい」


 と謝ってきた。そんな只野さんを見て僕は少し笑いながら


「気にしなくていいよ。仕方ないでしょ? 大事な友達のことなんだから」


 と微笑んでそう伝えていた。そんな僕を見て只野さんは胸をなでおろしながら


「ありがとう……」


 そう一言伝えてきたのだった。



 

 それからまた今井さんの話は続く。


「それから真也くんに休日呼び出しを受けて、自分の意志で近藤くんの方へ行くって聞いて「また近藤くん。近藤くんが真也くんも冬も奪っていく」って考えちゃって。その時は真也くんにもう「離れちゃダメ! 」としか言えなくなってた。なにがなんだかわからなくなってて。それに近藤くん以外でも真也くんのことで悩みがあったから……え? 別の悩み? これも近藤くんも絡んではいるんだけど私のことじゃないから。だからこれについては言えないかな? ごめんね」


 今井さんは僕には話せない真也への悩みがあるらしい。申し訳無さそうに謝ってきた。なぜか僕も絡んではいるらしいんだけれど……話せないなら仕方ないよね。僕は気にしないよと首を横に振り今井さんに答えていた。それを見た今井さんはまた続けて話し出す。


「真也くんとの会話後、私近藤くんのことをひどく罵ってた。私もそしてふたりとも近藤くんに壊されてたって言いながら……もう何言ってたか私もよくわかんなかった。けれどそれを見た冬が「近藤くんのせいにして。人のせいにばかりする春なんで見ていられない」だったかな? そう言われて……冬と喧嘩しちゃったんだよね。え? 壊されたって何を近藤くんが壊したのかって? うーん、恋かな? それと真也くんも入ってるかは私から言えないよ。それでその後、ひとり歩いて帰っているところに近藤くんと会って……「だいっきらい」って言っちゃったんだ。後は冬と近藤くんが仲良くしているのを見て私は喧嘩しているのになんでよって……自分が悪いのに近藤くんに腹を立てていたの。今考えるとおかしいよね。ふぅ……一応私が思っていたことは以上かな。話していると私がおかしかったことがよく分かるなあ」


 そう言って気まずそうな顔をしながらも僕を見つめながら話し終えた今井さんがいた。





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