第33話 思いがけない呼び出し
放課後アキと真也が部活へと向かった後、僕はいつものように鞄を取り帰ろうとしていると
「近藤くん、ちょっといい? 」
と声をかけられた。まさか今日も放課後に声をかけられるとは思わなかった僕は顔を上げて誰かを確認するとその人は全く考えもつかなかった人だった。
それは今井さん。
ボクは驚いてしまうがそれでもなんとか冷静を装い
「今井さん、どうしたの? 」
と返事をする。それに今井さんは
「少し時間いいかな? 話があるんだけれど」
とボクに尋ねてきた。なんというか僕はここのところ毎日呼び出されていないかな? と思ってしまった。けれど、只野さんと理解し合って、後は今井さん。今井さんともたとえ嫌われていてもしっかりと話をしないといけないと思っていたので断るつもりはなかった。アキのこともあるし。アキが嫌悪される必要なんて無いんだからと。
「うん。どこで話す? 」
そう返す僕に
「屋上でいいかな? 」
と答えた今井さんであったが、そこに
「ちょっと待って。春、何を話そうとしてるの? この前あなた、近藤くんに酷いこと言ったんでしょ? 」
と言いながら僕と今井さんの間に慌てて入ってきた人がいた。
それは只野さん。
僕と今井さんが一緒に居るのを見て来てくれたのだろうか? こんな場面見てしまったら只野さんも心配なのだろうな。
「冬には関係ないから。私が近藤くんと話がしたいだけ」
それに対して今井さんは只野さんに冷たく告げる。それを聞いた只野さんは
「それなら私も行くわ。今の春は何を言い出すかわからないから」
と僕たちについていきたいと言い出した。
「来なくていいわよ。聞きたいことがあるだけだから。この前のように一方的に言わないから」
「いいえ。邪魔はしない。横で聞いてるから」
ふたりは只野さんが来る来ないで言い合いを始めたので、僕はこのままではクラスでも目立ってしまうし話も進まないと思い
「言い合いするなら止めとこうか? 」
と今回はやめておいた方が良いと思いそうふたりに伝える。すると今井さんは
「わかったわ。冬も居ていいから屋上に行きましょう? 」
と今井さんは諦めたように僕にそう言い屋上で話すことになったのだった。
辿り着いた屋上で僕と今井さんは向かい合って立っていた。只野さんは少し離れたところで見守ってくれている。
「ねえ? なんで冬と朝あんなにはしゃいでいたの? 」
今井さんは僕が黙って立っていたところにそう尋ねてきた。その言葉に
「昨日、僕と只野さんは話をしてね。分かりあったんだよ。すれ違っていたことをお互い話してね。今井さんも放課後、僕と只野さんが一緒に教室から出ていったの知ってるよね? 」
僕は素直に昨日の放課後に只野さんと話したことを今井さんへと伝えた。昨日、今井さんも僕たちがふたりで出ていったのを知っているはずだ。見ていたはずだから。
「……あんなに泣いてたのに。あんなに悲しんでいたのに。なんでなんで? どんな言葉で言いくるめたの? 」
どうも今井さんは僕が只野さんにうまいことを言って丸め込んだと思っているようだった。
はははっ、嫌われているとほんと疑われてしまうなあと僕は思った。そんな事しないよ。
「そんな事しないよ? 只野さんから泣いたって聞いたよ。僕が知らないこといっぱい聞いたよ。今井さんばかり見て僕が周りを理解しようとしていなかったことがよくわかったよ。それでも只野さんは僕を嫌っていなかった。本当にありがたい事だったよ」
只野さんは僕が説明している内容に口を出しては来なかった。今井さんとの約束を守っているのだろう。自分が関係していることなのに口を出せない事に少し苛立ったような顔をしているようだったが。そんな只野さんに今井さんは
「冬。それ本当? 」
と念の為なのか確認をする。それを聞いた只野さんは
「うん。そうだよ。春が知っているように私は近藤くんのことが好き。だから素直になれなかったの。だからその事も全部説明して告白までしたわ。ただ、返事はもらわなかったけどね。いや、もらえないわ。今もらったら絶対に振られることがわかっているから。私は近藤くんのことをこのまま好きでいたいから。この前まで近藤くんが私を見ていないってわかっていたから告白なんて出来なかった。春が居たから。まあ、春が終わったら今度は千葉さんが現れちゃったけど。でもね、昨日恋愛感情は別にしてこれっきりにはしないって約束してくれたの。私達から近藤くんは離れてしまったけれど近藤くんは縁を切らなくてもいいって。今はそれだけでいいのよ、私は。今まで我慢してきたのよ? なんてことないわ」
と今井さんへと説明した。それを聞いた今井さんは
「なんで……なんで……私の大事な物ばかりあなたは奪っていこうとするの? 冬は私の友達。泣いてた時も何も出来なかった。冬の恋愛をあなたが壊したって思ってた。それをあっさり……今日の朝もあなた達は仲良さそうに話をしていた。私は冬と喧嘩しているのに。なんで……」
目に大粒の涙を溜めて僕にそう問いかけてきたのだった。
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