第20話 自宅の帰り道
時間が経つのも早いものでただ僕の部屋で話していただけなのにもう18時。そろそろ帰らないといけないアキを僕は自宅まで送ることにした。アキは
「送らなくてもいいのに。でも夏樹くんに心配してもらえてると思うと嬉しいし一緒に居られる時間が増えるんだからお願いする! 」
といつものにこやかな笑顔を僕に見せてそう言った。
ただ、アキは帰りの前に少し残念そうな顔をしていた。初めての女性と過ごす時間だったので僕はなにかしてしまったのかと気になったので聞いてみると
「ううん。予定では夏樹くんの両親に顔見せするつもりだったから残念だったなって」
そう言って舌を出し、ちょっと悪戯な娘のような顔をしてみせた。だから僕は
「今度来るときに会えばいいよ。もう来ないってわけじゃないよね? 」
と言ってあげると
「うん、うんうんうん。今度ね。来て良いんだね。わかった、今度は会うよお」
と嬉しそうな良い笑顔を見せてくれたので僕は安心したのだった。やっぱりアキは笑顔がいいと僕は思いながら。
アキの自宅まで帰る途中もふたり話しながら横に並んで歩いて帰っていた。アキは手を繋ごうとしてきたけれど僕は恥ずかしかったので遠慮しておいた。ちょっと残念そうなアキだったけれどそれでも楽しそうな笑顔だったので寂しそうな顔にならなくてよかったなって思っていた。
そんな帰りの中、僕は思っていた。えらくアキのことを気にするようになっているなって。寂しそうな顔、困った顔等そういう顔をあまり見たくないな、させたくないなって。今日初めてアキの悲しい顔を見て特に思ったのかもしれない。今まではアキは優しい顔、楽しそうな顔、嬉しそうな顔ばかりを僕に見せてくれていたのだから。
そんな事を考えていると、アキが
「ぴーーーんと来ちゃった。あのね、1つ決めたことがあるんだ」
そう言って僕の前へと飛び出した後、僕に向かって立ち見つめてきた。なんだろうと思い僕は黙って話を聞くことにした。
「大したことじゃないのよ。えっとね。これからはもし夏樹くん以外に告白されたら報告することにしたの」
その言葉に僕は意味がわからなくて混乱していた。そして
「うん? えっと別にそんな事しなくて良いんだよ? というかする意味がよくわからない」
とアキに言葉を返していた。するとアキは
「え? 私が告白されても気にならないの? うぅぅぅ。まだ会って数日だし仕方ないのかなあ。えっとね。今はそうでもそのうち気になってくるかなあって。告白したのは誰だ? とかいつかはヤキモチ焼いてくれるかもしれないし……なんてね。そして一番の目的は私のことを知っていてほしいから。告白されたことを私は隠しておきたくないんだ。ちゃんと知っていてほしいって思ったの。本当は他にもこういうことっていろいろとあるんだろうけど、とりあえずこの件は今思いついたので宣言します! 私、アキは告白されたらきちんと夏樹くんへと報告します。そしていつかはヤキモチを焼かせます! 」
そう言って僕へと駆けてきて腕を組んできた。いきなりだったので僕は避けられなかった。でもアキの嬉しそうな顔を見ているともういいかと腕を組んだままにさせておくことにした。
「わかったよ。なら僕もされることはないと思うけど、告白されたらきちんとアキに報告します! そしてアキにヤキモチ焼いてもらいます! でいいかい? 」
アキの言葉に対して僕もなにかしないとなと思い、同じような宣言をすると
「うぅぅ。それって私ばっかりヤキモチにならない? 一回でもきっと私ヤキモチ焼くよ? 絶対に。わかってる? 夏樹くん! 」
そう言いながらも怒ることもなく嬉しそうに笑いながら僕の腕を組んでいた。そんなアキに僕も思わず笑ってしまう。そんな時間を楽しみながら自宅へと送り届けるためふたり緒に歩いていくのだった。
アキさんはやっぱり笑顔がいいと感じながら。
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