第46話 アキと四季
それ以降、僕たちは他愛もない雑談を繰り返していた。とは言っても僕に対して大和さんが尋ねたいことを聞いてくるという感じで。そして僕からは特に聞く必要がなかった。なぜか? それは大和さんから私はこうなの、私はあれが好きだわと自分から話をしてきたからで。
まあ、そんな時間をアキが帰宅できるまで一緒に過ごすこととなっていた。とりあえずひとりぼーっと待っていたとしてもどうせ暇だったのだからこれについては特に問題はなかった。けれど男にうんざりしてそうな大和さんからわざわざ自分のことを僕に話してくることに対しては不思議に感じていたのだった。
「多分そろそろアキが来るんじゃないかしら? 」
空も暗くなり校庭からも部活動をする生徒達の声も少なくってきたように感じさせる19時を回ったくらいで大和さんは僕にそう声をかけてきた。ふーん、この時間くらいに終わるんだと僕は思いながら
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
と大和さんへお礼を伝える。それに大和さんは僕に微笑んで
「どういたしまして」
と伝えてきた。ふたりでそんな言葉を交わしていると
「四季ーー。おまた……あれ? なんで夏樹くんがいるの? 四季……あなたなにかした? 」
と部活動を終えたアキが走ってやってきた。それを見た僕はアキだとなぜか嬉しくなる。心も落ち着いてきた気がする。なんだろうね、ほんと。
けれどそんな僕の心とは逆にアキの第一声はちょっと不機嫌気味に大和さんへと向けられた言葉。だから僕はアキを宥めようと
「アキ、お疲れ様。いやいや大和さんは何もしていないよ。ただね、僕がアキと会いたくなってさ。だからここで僕が待ってたら大和さんと会ってね。それから一緒に待ってただけ。アキと大和さんっていつも一緒に帰ってるんでしょ? ここで待ち合わせて。まあそこに僕が現れたってだけだよ」
と僕がアキにそう伝えると
「アキ、私なにもしてないわよ。近藤くんが言ったとおり。まあ一緒に居る間にお話はさせてもらったけどね」
となぜかすこし挑発的にアキに向かってそう言った大和さん。それを聞いたアキは。
「はぁ……あんまり会わせたくなかったんだけどなあ。会わせるなら私が居るところでと思ってたのになんで私がいないところで会っているんだか……まあ夏樹くんは顔くらい知ってただろうけど」
とちょっと困惑した顔をしながら僕たちにそう言ってきた。だから僕は
「うーん、アキがそこまで何を嫌がるかわからないけど大丈夫だよ。僕は僕だし。今話してて僕になにか変わった所ある? なんにも変わっていないと思うよ? 」
とアキに心配しなくいもいいよという思いを込めてそう伝えた。それを見ていた大和さんは
「ここまでまったく私に反応見せないって本当に良いわね。アキって良い人見つけたんだなあ……」
と僕にはよくわからない表情へと変えてひとり呟いていたのだった。
「でも、なんで帰ったはずなのにここに来たの? 私に会いたいって……そりゃ嬉しいけれど結構待ったんじゃない? 」
とアキは僕が待っていたことに対して結構な時間があったんじゃないかと心配して尋ねてきた。だからそれに対して僕は
「アキは知ってるだろうけど今井さんと話をして……ああ、無事に終わったんだけどね。終わって家に帰ろうとしたんだけどさ。なにかあるとかそういうことないんだけど無性にアキに会いたくなって……ね。約束もしていないのに来ても迷惑じゃないかなあとは思ったけれど我慢できずに来ちゃったよ。うーん、アキ。もしかして駄目だった? 」
とアキに約束もしてないことに対して確認をしてみた。迷惑をかけなかったかと。それに対してアキはその言葉を聞いて逆に嬉しそうに
「ううん、会いたいなんて思ってくれたのに嬉しくないなんてことないわよ。何のきっかけでもいいの。私と会いたいなんて気持ちを持ってもらえるなんて……これは今日の私へのご褒美だね」
とアキは微笑んでそう言うと僕の腕へといつものように抱きついてきた。前は避けようとしていた僕だけど今はこれも僕にとって落ち着くことができる行動になっていたりして。そんな僕たちを見た大和さんは
「ふーん。このアキの雰囲気……もしかして私お邪魔? 先に帰ったほうが良い? 」
とアキの態度がここまでとは思っていなかったのだろう、ちょっと困ったようにそう言ってきた。その言葉にアキは
「今更何言ってんのよ。夏樹くんといつの間にか会って話までしてるのに。気にせずみんなで帰りましょ? ね? 夏樹くん、良いでしょ? 」
と大和さんにそう伝えた後、僕に尋ねてきた。僕は別に問題もなくいや僕が邪魔したかもしれないわけで
「もうアキに会えたから十分だし僕が居たら逆に邪魔じゃない? 」
と答えると、アキと大和さんふたり揃って
「そんな事ないじゃない」
となぜかハモって言ってくれた。
そんなふたりは「やったね」という感じで顔を見合わせて笑うのだった。
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