第45話 待ち時間



 自己紹介をした後、大和さんは僕の横に来て壁に寄りかかり何をするわけでもなく無言でアキを待っていた。僕も大和さんのことなんて全くわからないわけで。何を話したら良いかなんてさっぱりだ。だから僕もぼーっとしてアキを待っていたのだが。


 しばらくして大和さんは僕に声をかけてきた。


「ねえ? 」


 その声に


「なんです? 」


 僕は返事をする。ちょっと困惑したままで。


「アキのことどう思ってるの? 」


 いきなり核心の問い。友人としても気になっていることなんだろうが……直球すぎないか? 


「どうと言いますと? 」


 あまりにも直球すぎたせいか僕は曖昧な返事をする。


「どうってアキのこと好きなの? 」


 その返事に大和さんは曖昧な態度はさせないと言う感じでズバリと聞いてきた。こりゃ曖昧に話しても終わらないなと僕は考え


「好きかどうかと言えば好きですよ。ただ、この前まで僕には好きな人がいてですね。振られたばっかりなんですよ。だから、恋愛という話なら今の僕の頭の中じゃいまいちわからないというか……」


 と僕は困ったように返事を返す。その返事に大和さんは少し考え込んだ後


「……好きは好きなのね。そっか。じゃあさ、アキが他の人と付き合うって想像してみたら? そう考えたらどう思う? 」


 と例えを出して僕に考えて見るように言ってきた。アキが他の人と付き合うか。側に居なくなる……うーん、良い思いはないな。けれどアキがそれを選んだのならなんとも言えないな……


「良い気はしませんね。でもアキがそれを選ぶとしたら……応援するかな。側に居なくなるのは嫌だけど」

 

 と僕は大和さんに考えたことを素直に話す。


「……まだまだね。アキ、頑張ってると思ってたんだけど。こりゃもっと頑張んないとだね」


 大和さんはまた少し考え込んだ後独り言のようにそう言った。




「そうそう、私お願いがあったのよ」


 大和さんは急に話を変え、僕にお願いごとをしたいと言ってきた。もしかするとアキが言っていた僕たちと一緒に過ごしたいって言う話かな? 僕はそんな事を思いながら


「なんです? 聞けることなら聞きますけど」


 と大和さんへそう問い返す。そんな僕に


「アキから話があったと思うけど、私も今度からアキと一緒に近藤くんたちのところにお邪魔したいんだけど良いかな? 」


 とアキから話があったとおりのことを大和さんは伝えてきた。僕は


「ええ、いいですよ。アキも僕のクラスでひとりより同じクラスの友人といたほうが良いと思いますし。ただし、アキとちゃんと話をしてからにしてくださいね」


 と大和さんへ条件をつけたものの了解と返事をする。それを聞いた大和さんは


「あら。話が早いわね。それなら明日からアキと遊びに行くわ。よろしくね」


 と微笑みながら僕に告げたのだった。




 そんな話をした後、またしばらくふたり無言になる。なんというかこの無言の時間は結構しんどい。ひとりでぼーっとしている方が楽だなあなんて思える。大和さんもそこまで喋る人ではなさそうだ。まあアキと一緒に居るわけでアキと同じような話す人なら会話が成り立たない気もするからなあ。聞き上手じゃないと……そんな事を考えていると少しおかしくなり笑みを作る僕に


「なんというか近藤くんってガツガツしていなくて気楽でいいね」


 と大和さんが急にそんな事を言ってきた。ガツガツ? どういう意味だろ?


「どういうこと? 」


 僕は疑問に思ったことを素直に聞いた。すると


「男の人って好きですやら綺麗ですやらおべっかばっかり言う人が多いから。ちょっとうんざりしているのよね。そうだ! 近藤くん私のことどう思う? 」


 とどうも男の人が苦手な物言いをしてきた。そしてまたどう思う? 今度は大和さん? 


「えっと生徒会副会長なんでしっかりしているとか? 」


 僕は思いついたことをそのまま大和さんへと伝えた。それを聞いた大和さんは呆れたような顔をした後


「まさかそんな答えが帰ってくるとは思わなかったわ。ちょっとおかしいね」


 と少し笑いながらそう言った。そして


「ううん。そういうことじゃなくて女性としてどう思う? 」


 と大和さんはそう聞いてきた。大和さん……アキが言っていたとおり多分モテるんだろう。見た目も綺麗だと思う。だからってこういう質問をされるの僕はあんまり好きじゃない。そういえばアキと会ったときも似たような質問されたよなあ。ほんとモテる人は何を考えているんだろうな。そんなに聞きたいのか? 人の口から?


「えっと綺麗とでも言えば良いんですかね。そういう言葉がほしいなら別の人にでも聞いてください」


 僕はアキのことを思い出しながらそう大和さんへと答えた。でもまた冷たい言葉になったかなあと思いながら。けれどそれを聞いた大和さんはちょっと呆けた顔をして


「ああ……わかるわ。アキの気持ち。そういうことかあ」


 となぜか納得したような顔をして大和さんはそう呟いていたのだった。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る