第79話 友人の話そして突然の来客



 家族3人揃った朝。いや昼に近いか。


 そろそろニマニマと笑みを浮かべ僕を見ている母親から逃げたほうが良いかと席を立とうと思ったのだが、それを遮るかのように


「ねえ? なつが気を使って休日は私達ふたりにで出かけさせてくれるのはわかるけどね。たまには家族3人で出かけない? 」


 と落ち着いた表情に戻した母親がそう言って僕を誘ってきた。それに乗っかるように


「そうだな。夏樹。たまにはどうだ? 」


 と父親も僕を誘ってきた。うん。両親が誘ってくれることは嬉しいし、たまには付き合うことは問題ないんだけれど


「父さん母さんごめん。今日は用事があってね。昨日さ、寝落ちして友人からの連絡に気づかなくてさ。今日、夜にでも連絡しないといけなくて……」


 そう、今日はアキと真也に連絡をしなければいけないから…… 今日もほったらかしには流石にできないしね。両親に付き合ったら何時に帰ってこれるかわからないしと僕は考えていると


「真也くん? 」


 そう尋ねてきたのは母親。それに対して


「ああ、真也だね」


 と僕はアキにも連絡する必要があるのだが、言えば母親は先程以上にニマニマして突っ込んでくること間違いない気がしたのでアキのことは隠す僕。そんな事を考える僕をよそに続けて


「やっぱりね。でも本当にありがたいわ。なつが家に連れてきたことのある友人って真也くんだけだもの。だから真也くんがいるってだけで安心できるのよね、私」


 そう言って僕を見ながら微笑む母親。そう、今までで連れてきたことがある友人は真也だけ。というよりそこまでの関係になる友人って他には居なかったんだよなあ。あっこの前両親が居ない時にアキが来たっけ。うん、それだけだな。


 うーん。その事に思い当たると人付き合いが上手くない僕ということなんだろうなあと感じてしまう。

 うん。きっとそれがわかっているから母親が真也がいることで安心してくれているんだろう。友人が少ない僕を心配してくれているんだって。


 そんな母親に続いて


「夏樹。歳を取る度に感じるんだが、学生時代にできた友人は大切な宝物だぞ。ほんと……大事にしないと駄目だぞ」


 父親もそう言って僕に大事にするように伝えてきた。若い頃にできた友人か。


 歳を重ねた父親の言葉。今の僕にはよくわからないことを父親は感じてきたんだろうか。


 そんな心配してくれていることがわかった両親に


「うん、わかった。父さん母さん……大事にするよ」


 僕はそう伝えたのだった。




 そんな会話を交わした家族の団らん。そこに「ピンポーン」とインターホンの鳴る音が家に響く。


「お客さんみたいね。ちょっと行ってくるわ」


 そう言って母親は席を外し玄関まで向かっていった。すると玄関に向かった母親の「えーーーー」「わーーーー」と大きな驚いたような声がダイニングまで響いてきた。

 そんな状況に僕と父親は何があったんだろうと驚いて顔を見合わせてしまう。そしてふたり揃って玄関の方へ振り向いてしまっていた。




 そんな状況の後、しばらくして母親がまたニマニマした顔でお客さんを連れて戻ってきた。と……僕はお客さんを見て驚く。なんでこんな時間に来てるの? と。




 母さんが連れてきたお客さんは……アキだったのだった。

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