第11話 アキさん注目の的の日



 朝からアキさん襲来でみんなが唖然とする一幕があったわけだけど、それが今日に限っては簡単に収まる気配はまったくなく。なぜなら休憩時間毎にアキさんがやってくるからだ。それはこのクラスに今までなかった光景なわけで


「ぐっもーにんっ(Good morning! )」なんて言いながら来る時もあれば


「なっつきくーーん」と名前を呼びながら来ることもあり


「ごめん、次の授業移動教室だから、また後でね」と挨拶だけ来たりと


 アキさんが僕に会いに来る度にクラスメイトはチラチラとそして不思議そうに僕とアキさんを見てくるのだった。なんで毎時間会いに来るの? とでも言いたそうに。その中には今井さんや只野さんもいた。けれどどちらかというと驚いているよりも困惑しているような感じで。もしかして振られたくせにすぐ他の女性と仲良くなって何しているのよ? なんて思われているのだろうか? まあ僕が今更そんなこと気にしても仕方ないしなあとその後ふたりに気づいても考えないようにしたわけだけど。


 そして真也に関しては休憩時間に僕に尋ねに来たそうにしていたが、グループに捕まってしまうことや説明するには短時間の休憩では時間的に足りないと理解しているのか尋ねに来ようとはしていなかった。まあ僕としても昼休みに説明するのが一番かなと思っていたので、それまで待っててくれと心の中でそう思うのだった。




 昼休みに入ると真也はすぐに弁当を取り出し僕の元へとやって来た。


「夏樹、一緒に食べよう。そして説明してくれるか? 」


 真也は今にも飛びついてきそうな勢いで僕にそう告げてきた。というか慌て過ぎだって。


「説明するよ、ちゃんとね。ただ、そっちのグループの人に僕と食べるって伝えてきた? 」


 僕は念の為、僕と食べることを伝えているのか確認すると


「ああ、ちゃんとしてきたよ。だから大丈夫」


 とそう真也は答えてくれた。


 真也は机をくっつけて向かいに座って弁当を開ける。僕も弁当を取り出し開こうとすると


「あーー。私が来てないのになに先に食べようとしているのよ。アキちゃん泣いちゃうよ? 」


 と僕らのそばまで来て嘘泣きをするアキさんがいた。そうだった。アキさん来るんだったと僕はど忘れしていたことに申し訳なく思い


「アキさんごめん。思いっきり忘れてた。ほんとごめん」


 と手を合わせてアキさんに拝み倒す。するとアキさんは嘘泣きを止め


「あら、今日も島田くんが居るのね。ああっ私のことまだ説明してないからかな? それにしても私を除け者にするなんて。夏樹くん? ちょっと悲しいよ? でも仕方ない。ふたり一緒に過ごす初日だから今回は許してあげる。明日からは忘れないでよね」


 そう言いながら近くの空いた机を僕の横にくっつけてなぜか僕の横に座る。え? 普通横じゃないよね? おまけにくっつきすぎだし。


「なんで横? それにもっと離れて座ってもいいでしょ? 」


 と僕が聞くと


「え? 近くのほうが話しやすいでしょ? それにいろいろなこともできるよね? 」


 すこしにやっとしながらアキさんは僕にそう言ってきた。はぁなにか企んでるのかなあと僕が考えていると


「悪い、夏樹。ふたりイチャイチャしないで俺に説明してくれてもいいか? 」


 真也が少し困惑した顔で僕に説明を促してきた。それで周りのクラスメイトがイチャイチャしやがってみたいな目で僕たちを見ていたことにやっと気付く。


 そう周りを気にせずにふたりイチャイチャとも取れるそんなやり取りをしていたふたりだったことを。

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