第13話 条件
僕は昨日とは考えの違う真也の話を聞いて考え直していた。そして
「アキさん、真也が一緒に居ることになってもいいかな? 」
僕の意見だけじゃなく一緒に居ることになったアキさんにも確認を取らないといけないと思い尋ねてみた。すると
「うぅもしかして「やっぱり私来なくていいよ」とかにならないよね? 」
アキさんは真也が一緒に居ることよりもそうなることで今回の話がなかったことになるんじゃないかとそちらの方が心配のようだった。ちょっと可笑しく感じながらも僕は
「アキさんとは一緒に居るよ。約束したのにやっぱりいらないなんて言わないし。今日一日だけだけど、それでもアキさんと居たら楽しいって僕も思っているから。それに真也はアキさんとふたりでいる僕が幸せそうだって思ってくれたんだよ。だから余計にそんな事しないって。ただ逆にアキさんが僕と一緒にいるのが嫌になったらすぐ離れていいからね」
とアキさんに微笑みながらそう答えた。その答えを聞くとアキさんは
「そんな事あるわけないじゃない。軽い気持ちで一緒に居ようなんて言ってないからね。うん、夏樹くんが真也くんと一緒に居るって言うんだったら別に構わないよ。私は夏樹くんと一緒に居られるのならそれでいい。まあふたりじゃなくなるのは残念だけどねぇ」
とちょっとジト目で僕を見ながらも了承の言葉をくれた。
次に僕は真也に
「アキさんは居てもいいって。僕も真也が自分の意志でこっちに来たいと言うんだったら受け入れるよ。どっちにいるかなんて僕が決められることじゃないから。だって本人が居たいと思うべき場所に居るべきなんだよね。ただし、きちんと向こうと話し合って了承をもらってから来て。僕と違って真也は抜けないでって止められてるでしょ? それで無理に抜けてきたら問題が起こるかもしれないから。アキさんにも面倒がかからないようにしないと」
とこちらに来る条件として向こうのグループときちんと話し合ってから来てほしいと伝えた。そんな僕の言葉を聞いたアキさんは
「ふふふっ夏樹くんがそんな事気にしなくていいのに。夏樹くんとだったら面倒事なんて気にしないから。なんなら一緒に解決しちゃうから。でもなにも起こらないほうが確かにいいでしょうね」
と笑いながら僕にそう伝えてきた。そんな僕たちの言葉を聞いた真也はこう告げてきた。
「ああ、確かにアキちゃんにはもう面倒をかけたくないね。わかったよ。向こうときちんと話してくる。でもおかしいよな。夏樹の場合には誰も止めたり、戻ってきてなんて言わないなんて。それも俺には引っかかっていることなんだよなあ」
真也は僕になにも話がないことに少し不満を持っていたようだ。まあ実際は只野さんから「真也が戻るなら戻ってきていいよ」って言われたんだけどね。真也の言葉でそんな事を思い出していると
「というかアキちゃんって呼ばないでよ、ほんとにもう。アキって呼んで良いのは夏樹くんだけ。それと夏樹くんに話は来たみたいよ。ちょっと意味合いが違ったけどね」
とアキさんは言わなくて良いことを少しふくれっ面で口に出してしまう。
「わかったよ、千葉さん……。え? 俺以外になにか言ってきたの? 」
それを聞いた真也はアキさんの名前を呼び直しつつも僕に話があったことに驚きそのことについてアキさんに聞きただした。
その状況に僕はまずいと思ってアキさんをじっと睨んだ。アキさんは僕のその目を見て喋っては駄目だったというのが分かったのだろう少し困った顔をしながら
「あれ? 私の勘違いだったかも。ごめん、気にしないで」
と今更ごまかそうと言葉を濁していた。ああ……これじゃ真也には通じないだろうなあと僕は思いながら
「大したこと言われてないから。それに何を言われても向こうに戻る気はないからね。だから真也は気にしなくていいよ」
と僕は真也にそう告げてその話を終わらせたのだった。真也はその話を聞きたそうにしていたが話してしまえばきっと面倒事になると思ったのでスルーすることにした。
そしてなんとか聞きたそうな真也を振り切り、その後は堅苦しい話を止め僕たちは気楽な雑談等しながら昼食を取った。
こちらをずっと見ていた誰かを気にもせずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます