第5話 自棄キャンプに悪戦苦闘(3)

 すっかり日が落ちてしまった。焚火だけが灯りになってしまい、周りは真っ暗。慌てて、LEDのランタンを取り出して、テントの端にぶら下げる。他のキャンパーたちは別のサイトにいるのか、完全に私一人だ。おかげで夜空は、星でいっぱいで、つい見とれてしまう。

 私はクーラーボックスから缶チューハイを1本取り出した。そんなにお酒は強くはないが、こんな日は飲んでもいいはずだ。


 コクン


「……うまい」


 そして、カレーの匂いが周囲を満たしている。クッカーにはレトルトの袋から出したカレーが、ぐつぐついっている。メスティンで炊いたご飯は……若干、固めに出来上がった。底が少しおこげが出来てるけど、初めてだもの、こんなものだろう。


「どれどれ……ん、さすが、高いだけのことはあるね」


 誰かが言っていた、『カレーは飲み物』は間違いではない。スルスルと口の中に流し込んでしまうくらいに、このレトルト、旨すぎる。家では食べないけど、こういう時に奮発して食べるのは、アリだろう。


「あとは……このソーセージ」


 ソーセージというか、フランクフルトと言った方がいいか。バーベキュー用の鉄串に刺して、焚火で炙る。いい感じの焦げ具合に、よだれが出る。


 パリッ


「ん~! これこれ!」


 家の小さなフライパンには入りきらない長さ。これを豪快に食べてみたかったのよ。

 肉汁を垂らしながら、パリパリと食べていく。それを流し込むように缶チューハイを飲む、を繰り返す。


「んあ~! 最高!」


 夜空を見上げ、一人で乾杯する。うん、悪くない。


          *   *   *   *   *


 食事を終えると、後片付けをしなくては。カレーの入っていたクッカーをキッチンペーパーで余計な汚れを拭う。メスティンの方は米粒一つ残してない。


「洗い場と、ついでにトイレにも行ってきちゃおうか」


 食器洗いの道具一式とともに、汚れものを折り畳みのバケツに入れて、洗い場へと向かう。テントをはった場所から、少し歩かなくてはならないのが、残念なところ。

 ランタンを片手に暗い道を進む。ビクビクしながら、ようやっと誰もいない洗い場に着いた。さっさと洗い物を済ませると、トイレを探す。


「うっ」


 ここまで暗い場所にあると、何か出そうで怖い。ふと、夢に出てきた大きな狐を思い出した。

 山でのスローライフ、素敵だとは思う。

 しかし、トイレとか風呂とか、大変そうなのは嫌かも。ただのキャンプでこれだもんなぁ。憧れはあっても、一人での山暮らしは、現実的ではないよな、と思うのであった。

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