第39話 タブレットで出来ることが増えていた(2)

 ちょっとした憧れでもある『鑑定』アプリ。ダウンロード、しないわけがない。


「ふっふっふ、どれどれ、ぽちっとな」


 瞬時にタブレットの画面にシンプルな『鑑定』のアイコンが現れる。どうやって使うのか、わからないけれど、まずはアイコンをタップする。


『鑑定したいものを、カメラで映してください』


 なるほど、じゃあ、ミニテーブルに置いた煎餅の袋に照準を合わせる。すると、自動で画像が保存されたようで、その画像の下に説明が書かれている。


 ※煎餅:米粉や小麦粉が原料。これを練って薄くのばし、鉄板や網などで焼いた菓子。稲荷神特製。少しだけ幸運が訪れるかも?


「え、これ、稲荷さんの手作り!?」


 まさかの情報にびっくり。そのうえ、幸運って何。それも『かも』って。

 他にも色々なものを鑑定してみたかったけれど、もう一つ、やりたいことがあるのだ。


「残りのKPは約8000……『収納』をもうワンランク上げるには……5000KP」


 これでランクアップすると、『収納』できるサイズが5✕5mになる。そうなれば、『ヒロゲルクン』で伐採しても、『収納』の中に保存できる。そうすれば、山の中に入っても、大きな木も持って帰って来れる。そうすれば、ログハウスの素材も集められるはず。


「そういえば、ログハウス作るのに必要な素材って」


 もう一つのアプリ、『タテルクン』を開き、ログハウスのメニューを開く。当然、選択するのは風呂・トイレ付き。


「……100本」


 その数値を見て、目が点になる。

 たとえ、5✕5mになっても、この『収納』には入りきらなそう。

 指定されている素材は木材だけ。窓のガラスとか、お風呂、トイレ、こういった物はどうなるのか。ヘルプっぽいのがあったので見てみると、風呂・トイレについては付属品扱いになって、用意する必要はないとのこと。窓については、ガラス入りにしたければ、ガラスを用意しなくてはならないらしい。


「ガラスは自力では作れないって!」


 思わず声に出して文句を言ってしまう。


「はぁ……これ、普通にこっちでだけの生活じゃ、いつまでたってもガラス窓付きの家には住めないってことよね……日本家屋とかだったら障子とかになるかもだけど、ログハウスは? あれ、あのアイドルの無人島の家みたいに、板で開け閉めするパターン?」


 思い切りため息をついて、画面を睨みつける。


 ――こうなったら、板ガラス買ってこよう。ホームセンターでも売ってるかなぁ。


 意外にお金もかかることに、異世界らしさが半減してる気がしてた。

 ログハウスはすぐには駄目そうだけれど、荷物置き場に出来るような『小屋(床が土)』なら、すぐに出来そうだ。これは、素材は木材だけだし。20本なら、まだ、なんとかなる気がする。

 テントの裏の木々に目を向ける。


「やったろうじゃないの」


 私は煎餅を片手に、気合を入れたのだった。

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