第83話 ホットケーキとさくらんぼの種

 彼らの寝床を用意できた翌日は、今更ながらに、一人クリスマスを祝うべく、朝からケーキを作ってみることにした。


 ケーキ、なんて言ってはいるが、元になるのはホットケーキミックス。

 牛乳は消費期限の関係もあるからと、豆乳を山ほど買っておいた。こっちのほうが、少し長かったのだ。

 そして、産みたての卵は、当然、うちの鶏の卵。通常の2倍の大きさになっているのは、うちの畑のキャベツを食べているせい。どうも稲荷さんが買ってきてくれた餌よりも、キャベツの葉の方がいいらしい。気が付けば、黒ポットにあった苗はキャベツだけ先に無くなってしまった。


 ホットケーキに、生クリームの代わりに、豆乳クリームをかけるのだ!

 豆乳クリームのレシピはうろ覚えだけど、豆乳にレモン汁、三温糖で作れたはず。レモン汁は、某メーカーの瓶入り。三温糖も、なぜか、この前の爆買いで普通の白砂糖と黒糖のついでに買っていた。……使い切れる自信はない。


 結局、自分一人用に作ったホットケーキは、3枚。小さいフライパンだったせいか、やたらと厚みが出てしまった。

 そこに豆乳クリームを流す。初めての挑戦だっただけに、生クリームみたいなふわっと感はない。むしろ、どろどろ。まぁ、そんなもんだろう。これ、夜にでも外に出して置いたら、アイスクリームになっらないかな、なんて考えたり。

 これに、ミックスフルーツの缶詰を開けて、パイナップルやら桃、サクランボを載せてみた。

 今までそんなフルーツの缶詰なんて買うこともなかったから、ちょっと新鮮。買っても、せいぜい桃缶くらいか。

 これにハチミツを1キロボトルから、思いっきりぐるりと流してみる。


「贅沢だわ」


 市販のクリスマスケーキみたいに綺麗でもなんでもないけれど、達成感はある。

 これに紅茶を淹れて、いざ!


「いただきますっ……はむっ」


 食感は、まぁ、こんなもんだろう。クリームもやっぱり豆乳だからか、さっぱりした感じ。でも、アリだな、アリ!

 ちょっとご機嫌になりながら、今度はフルーツに手を伸ばす。甘い。

 フルーツ缶には、まだ少し残っている。あれ、ゼリーとかに出来たらいいけれど、粉ゼラチンなんてあったかな。爆買いの中には入っていなかった気がする。

 そんなことを考えながら、さくらんぼを口にいれ、ポロリと種を掌に吐き出した。


 ――さくらんぼの種。


 ふと、これを見て思った。


 ――もしかして、桜の木が出来たりする?


 それと同時に、あの立ち枯れした木々の風景を思い出した。

 リンゴの木もいいけれど、桜の木でピンクの斜面とか、いいんじゃない?

 そして、そこでお花見とか。ホワイトウルフたちと一緒に、花見なんて、なんとものどかでいいんじゃないか。


 そして、また思いつく。


 ――梅干しの種とかは?


 そう思ったら、ワクワクしてきた。


 ――今、うちの貯蔵庫に種のある物って何かあるかしら?


「よしっ!」


 思い立ったら、すぐに行動に移してしまう私。

 さっさとホットケーキを平らげると、食器を片付け、外に出る準備を始めるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る