第82話 厩舎完成

 洞窟の拡張には、結局、3日ほどかかってしまった。

 岩(アダマンタイト)が思いのほか大きくて、『穴掘り』にも時間がかかってしまったのだ。

 それでも、4匹全員が中に入るには、若干狭かった。

 なのでやっぱり、敷地内に狼小屋ならぬ、『厩舎』を建てることにした。


 『厩舎』にも、大・中・小と3タイプがあるらしい。

 その中で一番小さいサイズが、馬でいえば4頭分が入る馬房があり、一部屋がゆったりサイズのようだった。

 3日間の往復の間、よさげな木材をとってはきたものの、やはり量が足らなかった。仕方がないので、道づくりの草刈りの途中で見かけたのを『伐採』して、何とか材料が揃ったのは、年末も押し迫った頃だった。


 ……そう。クリスマスも祝わずに、私は『伐採』しまくったのだ。


 ありがたいことに、雪はちらほら舞うことはあっても、積もるまでにはいたらなかった。積もった雪の中、木材探しはしたくないもの。

 それでも、思ったよりも時間がかかってしまったのは、道沿いにいい木が少なかったせいだ。それでも、ハクとユキが頑張ったおかげで、『厩舎』を作る目途がついた。


 ででーん、という効果音があったらいいのに、と思うくらい、なかなか立派な厩舎が出来上がった。


『素晴らしい』

『あらまぁ』

『おおきいね!』

『なかはいっていい?』


 4匹がご機嫌で厩舎の前で尻尾を振っている姿は、大きくなっていても可愛いと思ってしまう。


「さぁ、入ってみて~」


 手前の馬房のドアを開けて見せると、ハクが一番乗りで入り込んだ。


『すごい! すごい! ひろいぞ!』

『これなら、ハクとユキ、一緒にいられるんじゃない?』

『え、ユキ、じぶんのばしょがほしいっ』

「はいはい、こっちも開けるよ」


 そう言って開けてあげれば、いそいそと入っていくユキ。


『五月様、ありがとうございます』

『私たちの場所までご用意いただいて……』

「気にしないで(元々の仕様だしね)」


 ビャクヤもシロタエも、嬉しそうにドアに手をかけ、自分で入っていく。器用なものだ。

 そして、そこでくるりと丸まってみせる。多少の余裕がありそうだ。


『ふふふ、時々、こちらで休んでもいいかもしれませんね』

『そうだな』


 4匹が4匹とも、喜んでもらえたようで、私もホッとした。

 今は剥き出しの土しかないけれど、できれば藁なんかあったらいいのに。せめて枯れ草でも敷き詰めてあげようか。

 

 ――ここに暖房みたいなのも、付けられないかな。


 今あるモノじゃ無理な話なんだけれど、ふと、思ってしまった。

 それこそ、屋根にソーラーパネルのせてもいいよね、と。


 結局、ハクとユキは残り、ビャクヤとシロタエは、山頂の棲み処に戻っていった。

 いつか、4匹でここに居ついてくれたらいいのにな、と、ちょっとだけ思った。

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