第24話 初めてのアプリ操作(1)
食事を終えて、箸を洗いたいと思って、ふっと思いだした。
「そういえば、トイレと風呂場!」
それに『収納』のダウンロードもまだだった。
慌ててリュックに入れてあるタブレットを取り出して電源を入れる。周囲の暗さに、画面がぼわっと明るく感じる。
「えと、まず、ダウンロードの前に念のため『タテルクン』を確認っと」
私はアプリを立ち上げ、建物のメニューを見てみる。家で見た時は、名称と必要なポイント数しか表示されていなかったけれど、こっちに来て画面を見てみると、詳細ボタンがついていた。
それを押すと、必要な材料が表示されている。
「なになに、『小屋(床は土)』は木材20本…木材!? え、20本って、え、え!?」
それって、周囲の木を伐採しなきゃ、駄目ってこと!?
私がやってきたのは、私でも切れる若木だけ。そんな若木なんかじゃ、小屋を建てる強度なんかないじゃない。
「あ、そうか。『ヒロゲルクン』で『伐採』すればいいのか」
でも、そうなるとKPを使わなくちゃいけないわけで、アプリを使った場合はKPは発生しないから、どんどんKPが減っていく。
「ちょっと……こんなんじゃいつまでたったって、ログハウスなんて無理じゃない……」
がっくりしながら、私は簡易トイレと風呂小屋の方も見てみた。
そもそも簡易トイレなんて、プラスティックとかで出来てるんじゃなかったか? そんな素材、こんな山の中でなんて用意できるわけないじゃない、と思っていたのだが。
「……え、材料無し?」
なんと、ただ割引してくれてるだけではなく、素材を用意しなくてもいいと。風呂小屋も同じだ。
「やだー! イグノス様素敵すぎるっ!」
思わずタブレットを上に掲げて、暗がりで叫ぶ私。
……誰も見てなくてよかった。
「と、とにかく、まずはトイレ、トイレ」
簡易トイレの選択ボタンを押す。
「うおっ!? な、なんで目の前に出るのよ!」
テントの真正面にデデンッと新品の簡易トイレが現れた。
お稲荷様の時は、目の前じゃなく、離れた位置に出てきたのに!?
「もう~! こんなところにトイレは嫌よ。確か、マップみたいなのがあったはず。これで移動とかできないかな」
メニューを探すとあった。それを開くと、なんと、今いる開けた場所の地図が現れた。ここは横長の地形になっているようで、車で入ってきた道とは別、反対側にも道があることを示している。
「まぁ、それは後々調べるとして、トイレを置くなら」
あまり離れ過ぎず、かといってテントのそばではないところ。
「テントの斜め後ろかな~。臭いはしないとは思うけど、目に見えるのは嫌だもんね」
マップにはテントに車、それに簡易トイレも表示されてる。
「で、これを指で移動させたら動かないかな……お! できた!」
目の前にあった簡易トイレが、若干浮いたかと思ったら、音もなくテントの斜め後ろに移動した。まるで、ゲームか何かみたい。まさか目の前で、動くのが見えるとは思わなかったけど。
「あとは風呂小屋ね。これも目の前に出てきそうだから」
設置したい場所のあたりに立てば、風呂小屋そのものも出てくるのかも。
そう考えたのはアタリだった。
「はー、よかったぁ」
激しく疲れた私は、折り畳みのイスに座ると、残っていた缶チューハイを飲み干したのだった。
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