第76話 羊毛ならぬ狼毛フェルトに挑戦
ログハウス1階の部屋の床には、綺麗になったホワイトウルフの毛が山積みになっている。ちなみに『売却』を見たら、とんでもない金額になった(ブラックヴァイパーなどはした金と思えるくらい)けど、もったいないので、まだ『売却』はしていない。
それにしても、ゴミがなくなっただけで、ボリューム倍増って、どうなの。
「まぁ、いっか」
さて、この毛をどうしたものか。
糸車みたいなのがあれば、糸を紡いでみるのもいいんだけど、そんなものはないし、やったこともない。
「あ、でも」
独楽みたいなのを使って糸を作っている動画を見たことがあった。あれも、ペットいいなぁ、という思いから始まって、つらつらと動画を渡り歩いた時に、たまたま見ただけだ。
「まず、独楽ないし」
まずは簡単な羊毛フェルトならぬ、狼毛フェルトを作ってみることにした。
掌にもっこりと毛をとり、ぎゅっと丸め、そこを大きめの針で刺していく。ただ、黙々と刺していくと、ピンポン玉よりも少し小さいくらいの玉が出来上がった。
「まだまだ、ぼこぼこしてるな」
私はひたすら刺し続け、気が付けば、外は夕焼けで赤くなっている。暖炉の火も熾火が辛うじて残ってるだけ。
「ひえぇぇ、寒いはずだよぉ」
慌てて薪をくべて、LEDライトも点ける。
ミニテーブルには、ピンポン玉より少し大きいくらいの玉が4つ、並んでいる。
一番最初にやったものは、針で刺しまくったせいで、小さくなりすぎてしまったのを、補正して、ピンポン玉まで戻したのだ。
一番きれいに出来た、少し大きめな玉に、黒い刺繍糸で目玉と口、髭を縫ってみる。
「これじゃ、耳なしわんこだな……」
再び、狼毛フェルトで耳を作るべく、ぷすぷす刺しまくる。三角の耳が出来上がり、顔つきの玉に、耳を生やす。
「初めてにしては、いいんじゃな~い?」
なかなかの出来に自画自賛。
これに糸を通して、チャームっぽくしてみた。タブレットを入れているバッグに付けてみたけれど、どうだろう。色が白だから汚れが目立ちそうだけど……まぁ、それならそれで、『分解』してみればいいか。また、汚れだけ落ちてくれればいいけれど……もしかして、ただの毛まで戻っちゃったり!?
……危険な予感がするので、その時は洗うことにしよう、と思った。
* * * * *
ログハウスの中は、様々な精霊たちがうようよしている。
光、水、風、土、火。
それらが、五月の周囲を飛びながら、彼女の手元を覗き込んでいる。
五月が見えるようになったら、きっと叫び声をあげるぐらいに。
『あら~、ホワイトウルフの毛で作ったのね』
『ふ~ん、一針一針に力が籠ってるから、かなりヤバいのが出来たんじゃない?』
『ホワイトウルフってだけでも、凄い力があるのにね~』
『確かに~』
『ヤバいね~』
彼らの目には、白い玉からオーラのようなモノが光り、溢れているように見える。
『結界もそうだけど、聖女様は、ヤバいね~』
『ヤバいね~』
真剣な顔で、もう一つの白い玉に顔を縫いつけている五月。
精霊たちの言葉は、彼女には届いていない。
+ + + + + + + +
『第62話 貯蔵庫のドアをどうしようか』では、ブラックヴァイパーを1万G=1万円と五月は思っていますが、実際には1G=100円なので、実は100万円だったりします。
まだ、五月にはこの世界の貨幣価値がわかってません(笑)
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