第20話 いざ、お山へ!
退職する1週間前から、有給消化することにした。
そしてその間に、不用品の処分や、諸々の手続きや買物をすることにした。
山の中は電気がない。だから大きな家電(テレビや冷蔵庫、洗濯機)は、売ることにした。もう、ほとんど山の中でのサバイバル生活だ、と腹をくくったのだ。生ものの保存がきかないのが困るけれど、これは買ったらその日に食べる、とかするしかないかも。
それでも、長期で住むとなれば、先々、絶対冷蔵庫が欲しくなると思う。他にも電気関係で必要なものって、いくらでも出てくるはずだ。
むしろ、発電機みたいなのを買う方向で考えるべきなんだろうか。
どうも、その手のことには疎いから、わからない。
「……あとは、お稲荷様に相談してみるかなぁ」
最初の時も、私の希望を聞いて、簡易トイレや風呂小屋を用意してくれたくらいだ。何かしら、アイデアがあるかもしれない。
ちなみにキャンプの時は、風呂小屋には電気はなかったので、LEDのランタンでしのいだ。月明かりがあるときは、窓を開けてたけど、やっぱり、もう少し光量の強いライトが欲しいところだ。今度、大きなホームセンターにでも行って見てこよう。
……女の一人暮らしの荷物を、侮ってはいけない。
それなりに捨てたり、売ったりしたはずなのに、なんでこんなに残っているのか。さすがに、雨ざらしで外に荷物を置いておくわけにもいかない。
仕方なく、お稲荷様、もとい、稲荷さんに電話をした。
『おや、どうかしましたか』
「ご無沙汰です。あの、引っ越し荷物が、ちょっと……思いのほか量がありまして」
『山の中ですよ? なんでまた』
「……女性の一人暮らし、舐めないでください」
『……』
私の低音ボイスが効いたのか、稲荷さんは無言になってしまった。
「それでですね、山の方、荷物がおける状態になるまで、あるいは『収納』に入れられるようになるまで、預かってもらえないかと思いまして」
『……はぁ。まぁ、仕方ないですね』
「ありがとうございます! あ、これから出るので、夕方くらいに着くと思いますんで!」
『え、あ、はい。わかりました』
すでにお金の方は入金済みで、契約書も返送済み。もう、あの山は私の資産になっている。だから、わざわざキャンプ場に予約する必要もない。
そして、新たに購入したのは、中古の軽自動車。後ろの座席を倒せば、色々荷物が載せられるやつだ。ちょっと思ったより高かったけれど、ここで妥協しちゃ駄目だと思って買った。おかげで、予想よりも多めに載せられそう。
そして、詰められるだけの荷物を詰め込んだ。ぎちぎちである。これ、重くてハンドルとられないだろうか、とか思ってしまう。
当然、キャンプ道具一式もしっかり忘れていない。
「はぁ。鍵を不動産屋さんに返して、役所に転出届出したら、そのまま向かわなきゃ」
異世界のはずなのに、普通に引っ越しの手続きをしている私。
そんなことを思ったら、思わず笑ってしまった。
「よーし」
いざ、お山へ出発だ!
+ + + + + + + +
一応、引っ越し先の住所は、管理小屋の住所になっています。なので、住民税はちゃんと払うことになります。
山については、異世界にある山なので、税金はかかりません(笑)。
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