第50話 いよいよログハウス!(2)

 翌日、稲荷さんに手伝ってもらって、管理小屋で使っている軽トラックを利用して一緒にホームセンターで買い出しをしてきた。キャンプ地についてしまえば『収納』が使えるので、そこまで運んでもらったのだ。

 そして材料が揃ってしまえばあっという間。


「出来てしまった……」


 2階建てのログハウスである。

 場所は材木置き場にしていた場所。本当はテントの辺りに建てたかったけれど、荷物の片付けが終わっていなくて、そのままなのだ。

 まずは、どんなものか、と思ったし、どうせ移動できるんだもの。


「なかなか立派なものが出来ましたねぇ」

「はい」


 感無量である。

 大きさは小屋2つ分より大きい。むしろ3つ分くらいありそうだ。正面から見ると、ログハウスは大きめのガラス窓が2つ、上に丸窓が1つ見える。そして建物の脇には、レンガの煙突が1階からずっと伸びていて、屋根よりも高い。たぶん、これが暖炉だろう。


「絶対、レンガ200個じゃ出来ないよね」


 心配になりながら、ドアを開ける。


「わ、木の匂い」


 胸いっぱいに匂いを吸い込んでから、私は靴を脱いで家の中へと入った。

 灯りはないので、外からの光しかない。入って正面に2階へと上がる階段。少し傾斜がきついけど、掴んで登れば、いけなくもない。上を見上げると天井がかなり高く感じる。

 そして、左手はリビングに暖炉。あの外に出ている煙突と繋がっているんだろう。右手はキッチン。その奥にも部屋らしきものが見える。


「キッチンはさすがにガスコンロはないよね」


 というか、竈すらない。板の間に竈は無理か。どうやって調理すればいいんだろう。

 そして、立派なカウンターがある。作り付けの戸棚があって、ここに食材や食器を入れるのであろう。しかし、冷蔵庫をいれるスペースはない。

 水道があるのにはびっくり。風呂小屋にあった青い石がのった蛇口と同じだ。これ、あるだけでかなりホッとした。これで、湧き水も管理小屋に水を貰いにも行かなくていいし、ペットボトル買いに行かないで済みそうだ。

 そしてキッチンの脇の廊下にはドアが2つ。何かな、と思って手前の扉を開けてみたら、トイレ、奥がお風呂場だった。


 ――やっと建物の中にある状態になった!


 思わず感動で泣きそうになった。

 今度は2階へとあがる。そこには部屋が二つ並んでいて、一つは窓無し。そのまま物置にでもできそうだ。

 もう一つは丸窓。正面から見たときに気付いたヤツだ。そして、この丸窓のある部屋には、作り付けのベッドが置かれていた。


「おおお、ベッドだ、ベッド」


 そうは言ってもむき出しで、布団もクッションも何もない、ただの板ばり状態。それでも、地面で直に寝るよりもずっといい。最近は地面からの冷気を感じるようになってきたから余計に。

 私はゆっくりと階段を降りると、稲荷さんが家の中に入って、暖炉の中を覗き込んでいる姿が目に入った。


「稲荷さん」

「あー、どうも。ずいぶんと立派なのが出来ましたねぇ」

「ええ、はい、そうなんですけど……どう考えても、あの素材の量で、ここまでの物ってできませんよね?」


 そうなのだ。

 木材の量だけでなく、レンガにしたってそうだ。風呂やトイレに至っては、付属品扱いだから言うに及ばず。


「そうですね。イグノス様、大奮発してくださったようです」


 ほっほっほ、と、まるで好々爺のような笑い方をする稲荷さん。

 だよねー、と思いながら天井を見上げる。例え電気が使えないとはいえ、ここまでの家を作っていただけたのだ。キャンプ生活よりも、何倍もマシである(たまにやるから、楽しいのだ)。


 ――イグノス様、ケチなんて言ってごめんなさい!


 見えないイグノス様に向かって、心の中で拝む私なのであった。



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