第13話 異世界でソロキャンプ(2)

 結論から言えば、戻ってこれた。

 普通にトンネルを抜けて、管理小屋に行って薪を買えたし、鉈まで借りられた。むしろ、率先して間伐してくれればありがたい、とまで言われた。


 ……いや、間伐とか無理だし。


 とにかく、木は切ってよくて、滅多なことでは動物も寄ってこないらしい。むしろ、音をたてるほうが寄ってこないと。そういえば、熊避けに鈴を鳴らしたりするって聞いたことがあった。

 そして、キャンプする場所にも戻ってこれた。それに、ちゃんとトイレも風呂も残ってる。


「ここ、本当に異世界なのかな」


 改めて周囲を見渡すけど、これといって目立って変わった木や草花があるようにも見えない。それこそ、キャンプ場の近場にある山と言われたって、そうなんだ、って思うくらいだ。


「……まぁ、とりあえず、テント張ってみますかね。それに荷物も下ろさないと」


 今回は、新しいテントを買った。ちゃんと一人用の。それに前のに比べたら格段に組み立ても簡単。

 お風呂の小屋の近く、直射日光が当たらない木陰にテントを張ることにした。余計な草や石をよける。一度、部屋でも挑戦済みだから、すぐに出来た。

 寝袋に大きめのブランケット、折り畳みの凸凹のレジャーマットを敷いて、テントの準備は完璧だ。

 クーラーボックスの中は、さすがに1週間分の食料など用意はしていない。だいたい、少し暑くなってきている今じゃ、2、3日持たないだろう。ほとんど部屋に保存していた食料(多くはインスタントのラーメンとか、レトルト食品)だ。できるなら、道の駅とか、大きなスーパーに買い出しに行けばいいと思っていたのだ。


「ここからだとちょっと遠いけど……明日にでも買い出しに行こうか」


 一日がかりになりそうな予感がするけれど、仕方がない。その時に、保冷剤も追加しないと駄目かも。

 クーラーボックスを下ろして、テントの脇に置く。大きめのリュックも下ろしてテントの中に置こうと思ったのだけれど……駄目だ、これを入れたら私が寝られない。


「あー、失敗した。これ、あれか、タープだっけ。ああいうの張った方がよかったのか」


 むしろ、そのまま車を荷物置きにするのが無難かもしれない。

 管理小屋で買った薪を下ろして、焚火台もセット。ミニテーブルに折り畳みのイス。それにLEDのランタン。私の定番グッズを用意していく。


「蚊取り線香も、もういるよね」


 虫よけスプレーも持ってきてはいるけれど、まだ蚊はいないと思いたい。いや、異世界に蚊はいるのか?

 ミニテーブルの上に蚊取り線香ホルダーを置く。一応、腰にも下げられるタイプだけど、今はここに置いておく。

 線香の匂いが周囲に漂うようになった頃には、荷物は一通り下ろしきった。


「さてと、そろそろ焚火を点けなくちゃね……今日は、ファイヤースターターに挑戦よ!」


 車の中に置きっぱなしにしているリュックの中に、ファイヤースターターセットを取りに行った。

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