第62話 貯蔵庫のドアをどうしようか

 あれから、柴犬サイズのホワイトウルフたちが、毎日遊びに来るようになった。

 遊びに来る、というよりも、うちの人工池の水を飲みに来るようになった。

 ちなみに、あの黒い蛇、ブラックヴァイパーなるものらしく、一応、革や牙は武器や防具、肉は食用になるらしい。しかし、今の私には、蛇を剝いだりできるわけもないので、さっさと『売却』してしまった。なんと10000G! こっちの物価がわからないから、どれだけなのかわからないけど。単純に1万円くらいかなぁ、なんて勝手に思っていたりする。


「わふわふっ!」

「お、おはよう」


 私がせっせと貯蔵庫を作っていると、私に挨拶をして敷地の中へと入っていくのだ。それが終わると、日当たりのいいログハウスの前の広場で2匹で追いかけっこをしたり、昼寝をしたり。

 ほんとは、餌でもあげられればいいのだけれど、彼らにあげられるものがない。さすがに、ドッグフードってわけにはいかないだろう。ここにはそもそもないけれど。


 一方で、あの親らしき大きいホワイトウルフたちは、顔を見せには来ていない。

 もしかしたら、近い所にいるのかもしれないけれど、私の視野に入っては来ない。私に気を使ってくれているのだろうか。そんなことはないか。


「よし。これくらい奥行きがあればいいかな」


 どんどん掘り進めて、今では12畳くらいの広さのスペースが出来上がった。中はひんやりした空気で、それなりに湿度もある感じ。いわゆる冷蔵庫の野菜室みたいな感じだろうか。


「あとは床をコンクリで固めて……壁際に棚なんか出来たらいいかな」


 自力で作れるか不安に思いながらも、作らねば! と気合を入れる。


「それに、入口のところも、ドアを置くなりしないと」


 まだ荷物も何も置いていないけど、あの蛇みたいなのがまた来て、ここに居つかれたりしたら、最悪だ。今はなんとか、新しく作った『小屋(床は土)』で蓋をしている。サイズ感がちょうどよかったから、そのまま利用しているけれど、これは、なんとかしないと、と思う。毎回、小屋を『収納』しての出入りなんて、現実的ではない。……出来るけど。


「う~ん、『タテルクン』に新しいメニューとか、増えてないかなぁ」


 昼間は肉体労働(といえるかは微妙だけど)のおかげで、すっかり早寝になっている私。本当は夜のうちに、タブレットの機能を研究するつもりなのだが……それが、なかなか出来ずにいた。

 今日は昼過ぎくらいには、貯蔵庫がキリのいい状況にまでいけたから、残りの時間は久々にタブレットの研究に費やしてもいいだろう。


 寒くはなってきてはいるものの、天気がいいおかげで、外に椅子を出して座っても気分がいい。それでも一応、ひざ掛けと、焚火も準備する。

 ついでにお湯でも沸かして、コーヒーでも入れようか。

 キッチンで水を入れてきたキャンプ用のケトルを、焚火にかける。これだけで、すでにキャンプ感が増す感じ。

 ミニテーブルに、大きめのマグカップ、これにインスタントのコーヒーを入れて、準備万端だ。


「さて、『タテルクン』、『タテルクン』」


 タブレットを手に椅子に座っていると、私の両隣にホワイトウルフの子供たちがやってきた。興味深そうに私の手元を覗き込み、フンフンッと匂いを嗅ぐけれど、それ以上のことはしなかった。そして大人しく私のそばで寝だした。


「野生はどうした、野生は」


 まるで、どこぞの飼い犬みたいな様子に、つい笑いながら、そんな言葉が出てしまった。

 それでも彼らは気にせずに、そのまま、くーすか寝てしまっている。


「ま、いっか」


 私は『タテルクン』を開くと、じっくり調べることにした。

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