第63話 『タテルクン』を調べてみる

 結局、『タテルクン』のバージョンアップは、まだのようだった。『ヒロゲルクン』ほど使っていないせいもあるだろう。残念。『収納』みたいにKPでバージョンアップできればいいのに。


 現状、『タテルクン』のメニューでは、決まった建物しか建てられない。

 小屋を作った時にコンクリートを使った後に、新しいメニューが追加されたから、新たに加工を追加したら、メニューになるんだろう。

 柵もそうだった。ニスを塗ったバージョンも、追加されてたし。


「建物ばっかり考えてたけど、そういえば、柵だって作ってたんだから……門や扉みたいなのも作れるはずだよね」


 門というと金属なイメージがあった。だから、ホームセンターで買ってこなきゃいけないって思ってた。けれど、それこそ、牧場の門みたいに木製なのもありなはずだ。


「あ、敷地の出入り口の扉も作らないとって思ってたじゃない」


 この前のホワイトウルフは入ってこなかったけれど、獣たちが入ってこないとは限らないじゃない。


「えと、柵があるなら……門、門、門……あった!」


 完全に見落としてた。

 ちゃんと、牧場の門みたいなのもあったけれど、木製の扉だけのパーツもあった!


「これ、扉だけ作って、木枠を横穴のところに埋め込めば……いけるんじゃない?」


 土壁はこの前『ヒロゲルクン』で、湧き水で土の階段を作ったのを、そのまま壁にしてしまえば。


「土は散々掘ったのがあるでしょ、あとは木材があれば」


 だがしかし。在庫の木材が、今は空っぽ。


「また、伐採しないとか。あー! 薪も忘れちゃ駄目じゃん!」

「くぅ~?」

「あ、ごめん。声、大きかったね」


 声をあげた方の頭を撫でる。いい毛並みに、思わずにやける。


「今、蓋代わりに使っている小屋、あれ、『収納』で分解できるか……あー、でも薪専用の小屋も用意しておきたいかぁ」


 もう少ししたら、あっちに行けなくなる。

 買いだめしておく物もあるし、一度、行かないとかな。


「はー、やっぱり、また伐採して回らないとかなぁ」


 一応、この敷地周辺とあちらに戻る側の木々の伐採はやった。

 ……そういえば、こっちの村だか町に向かう道も整備しつつ、伐採しないとって思ってたじゃない。魔道コンロ買うために!

 しかし、今日は、なんだか、これ以上働きたくない気分。


「冬ごもりの準備をしないといけないのに、今日はもう、のんびりしちゃおうかなぁ」


 両脇にイケメンわんこを控えさせて、温かいコーヒーを手に、日向ぼっこ。

 久々にのんびりした空気に、ほへ~っ、と気だるいため息が出る。

 

「こんなにいい日和だと、ほんとに冬が近いなんて、思えないよねぇ」

「わっふ」

「わっふわっふ」


 2匹の返事のような鳴き声に、思わず笑ってしまった。

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