第78話 犬小屋ならぬ、狼小屋
精霊が見られるようになるかも!
そう思ったら、自家菜園の野菜たちをモリモリ食べなきゃ! と思いつつ、そのうち、私も魔法が使えるようになる? と聞いたら、それは難しいんじゃないか、と言われてしまった。
詳しいことはわからないけど、こっちの世界の人間には、魔法を使うための回路のようなものが体内にあるのだとか。その回路を、今の身体に作り上げるのに、どれだけかかるか、想像もつかない、とのこと。
野菜食べたくらいじゃ、見えるようになるくらいらしい。
……残念である。
まぁ、それはそれとして。
「うちで小屋作ってあげるのもいいけど」
一応、畑の向こう側、湧き水側の柵付近は、それなりにスペースが空いている。木材さえあれば、小屋くらいだったら、3つくらいは並べられそうだ。
ちなみに、その柵の山側の角に、この前買ってきたリンゴの苗を植えてある。一応、『ヒロゲルクン』で耕してから苗を植えたせいか、人工池の水を撒いたせいか……もう、それなりに大きくなっている。まだ、花は咲いていない。
木材の在庫は、実はこの前の薪割で結構使ってしまっているのだ。
「むしろ、あなたたちの洞窟っていうのを広げた方が早くない?」
『……そんなことが出来ますか』
洗濯物を干しながらそう言うと、ビャクヤがシロタエの後ろからのそりと顔を出す。やっぱり、デカくなったよね。
「たぶん。あの貯蔵庫も作れたから、もしかしたら、少し広げられるんじゃないかなって」
『そうだと、助かります』
でも、どうせなら、こっちにも犬小屋ならぬ、狼小屋を作っておいてもいいかもしれない。今は、遊びに来ている彼らが雨宿りできるような場所はない。3つある小屋も、それなりに荷物が入ってて、彼らの身体の大きさが入りきらないだろう。
「ちょっと待っててね。一応、こっちでも休める小屋がないか考えてみるから」
『ありがとうございます(そうなったら、こちらの守りも少しは厚くなるでしょうしね)』
私は洗濯物を干し終えると、いつもののんびりセット(折りたたみ椅子&焚火台&ミニテーブル)を持ち出してくる。ついでに今朝沸かしたお湯をもう一度沸かしなおして、紅茶の準備。
ハクたち子供らは、いつの間にか敷地を出て行ってしまった。しかし、ビャクヤたちは、その場で日向ぼっこ。ハクたちと比べると、体の大きさのせいか、迫力が違う。
――毛を梳いたら、すごい量が取れそうだわ。
私はよっこいしょっと、椅子に座り、タブレットを開く。『タテルクン』は、貯蔵庫のドアを作ったのが最後。あの時は、普通の人が住むような住宅関係しか見てなかった。でも、鶏小屋もあったんだし。
「犬小屋、犬小屋……あった」
しかし、小さい。まぁ、犬小屋だし。
「あとは……厩舎か」
あー。ちょっと、デカいかも。
ログハウスよりもデカい。それに馬用だし。でも、大きさ的にはいいのか?
「問題は素材集めかな……雪が降りだす前に集められるかなぁ」
今日は天気がいいけど、いつまでもつか。
こっちは天気予報がないから、微妙に困るんだよな。
「ま、あればあったで、困らないでしょ。サイズは……うん、小屋3つ分くらいだね」
せっかく植えたリンゴの木だけど、これはちょっと移動させなきゃいけない。
でも、こんな時のためのタブレット。移動も楽ちん。
「よーし。まずは……素材集めも兼ねて、ビャクヤたちのお宅訪問と行きますか」
私は少し温くなった紅茶を飲み干すと、気合を入れて立ち上がったのだった。
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