第27話 水場を探そう(2)

 色んな建築物や構造物がリストには表示されている。その中に水に関するものは『井戸』しかなかった。

 現代社会に馴染んでいる私に『井戸』は厳しい。思わず遠い目になる。

 そもそも、その『井戸』を作るためにも、500KPは必要で、当然、素材も集めないといけない。素材名に『石』とか『木材』・『縄』とある。これ、バケツで水をくみ上げるタイプなんだろうか。


「この異世界って、どんな文化レベルなのよ。風呂小屋では、ちゃんとお湯と水、別々で出てくるのに。はぁ~。ほんと、優しいようで優しくないよね」


 思いっきりため息をついた私は、スキレットやクッカーなどの洗い物をまとめて持つと、風呂小屋へと持っていく。

 食器の類も風呂小屋で洗うっていうのも、やっぱり違うよなぁ、と思う。それこそ、井戸があれば井戸端で洗ったりするんだろうか。


「まぁ、優先順位は、まずは飲み水かな」


 洗い物を終えて、ジーパンに履き替えると、キャンプ場の管理小屋に向かう。さすがにムチムチした下半身をさらす勇気はない。それに、ついでにそのまま買物に行ってきてしまうつもりだった。


「おはようございます」

「あ、望月様、おはようございます」


 新聞を読んでいた稲荷さんが、小屋に入ってきた私の方へと目を向けた。


「あの、ちょっと、ご相談がありまして」


 私は水の確保について相談した。


「毎回ペットボトルを買いに行くのも面倒ですし、それなりにお金もかかりますし」


 井戸については、KPがほとんどない今は論外だ。


「なるほど。ん~、確か山の中に湧き水がわいている場所があったと思うんですけど」

「湧き水?」

「ええ。確か、あの開けた場所の西側のはずれに、獣道みたいなのがあるんですが……」

「獣道ですか?」


 そういえば『タテルクン』のマップで見た時に、道っぽいのがあった気がする。実際に目に見えて道っぽいところはなかったはずだけど。


「望月様、タブレットお持ちですか」

「あ、車の中に」

「じゃあ、私のでいいか」


 そういうと、稲荷さんは自分のタブレットを出してきて『ヒロゲルクン』を立ち上げた。


「これのマップを開いて……これ、あの開けた場所なの、わかります?」


 テントや簡易トイレ、風呂小屋があるのがわかるので、うんうんと頷く。


「で、ここ、この道なんですけどね」


 稲荷さんが指さしたのは昨夜、トイレを移動させる時に気が付いた道だ。


「この道の先なんですが」


 そういうと、マップの縮尺が小さくなっていき、山の全体が現れた。

 この山には頂上らしきものが2つある。所謂、フタコブラクダみたいな感じだろうか。それのお尻あたりに、今のキャンプ地点がある。そこから、細い道が山の中を抜けてどこかに繋がっているらしい。


「これの先って」

「ん? 一応、とある国の村や町に繋がってますよ」

「ほう……」

「まぁ、ほとんど、ここまで来るのはいませんがね」


 その言葉に、若干の不安を覚える。

 そういえば、獣の類もいると言ってたっけ。あの場所には来ないようにしてあるとか、なんとか。


「で、湧き水なんですけど」


 そう言ってアプリのメニューを開くと、何種類かの項目が現れ、その中の一つを押した。


「うん、やっぱり……ここが一番近いかな」


 彼が示したのは……こぶとこぶの間の少し上あたり……道は繋がっていない場所だった。

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