第31話 異世界仕様に驚く
草刈り鎌はサクサクと進む……わけもなく。
「ホントにこれ、道?」
入口こそ、細いながらも道の跡くらいはわかっていた。だけど、少し進んだだけで、獣すら通ったことがないんじゃないか、というくらい背の高い草が生えている。
とりあえず、車で入れるくらいの幅くらいにはしないと、と思い、横幅を広げるつもりで草を刈る。
「暑っ」
額の汗を拭って、腰を伸ばす。
背後を振り返って見ると、全然距離が進んでいない。
「……少し、休もう」
私は鎌をテントの中に置いて折りたたみのイスに座る。涼しい風に気分が軽くなる。水分補給に、箱から出しておいたペットボトルから、水をマグカップに注ぐ。温いけど、これは仕方ない。
「はぁ……いつになったら、湧き水のところまで行けるのやら」
テントに置いてあるタブレットの電源を入れ、『ヒロゲルクン』を立ち上げ、マップで確認する。
「あら。道幅が広がってる?」
獣道と言われて細い道として表示されてた場所だけれど、途中まで(画面のサイズで言えば、2センチくらい?)幅が広がって見えた。
「まだこんなにあるの~」
うんざりしながらアプリを閉じると、画面の『収納』アプリに小さく赤い点が明滅しているのに気が付いた。なんだろう、と思い、タップすると。
「げ。何、満杯!?」
慌てて確認すると、『草』と『枝』で満杯になっていた。
自分で収納に入れた記憶はない。慌てて、『草』の『廃棄』を選ぶ。量がたいしたことがなかったからか、得られたKPは合わせても10KPにしかならなかった。
「うーん、予想よりも少ない」
カップラーメンのカップ1個で5KPなのに、これいかに。
「これって、自動で収納しちゃってるってことなのかなぁ」
どこかに設定とかあるんだろうか、と探したけれど、見つけられない。仕方ないので、そのままにして、ポータブル電源の充電の状態をチェックする。まぁ、たかだか1,2時間じゃ半分も出来てないよね、と思ってたんだけど。
「え、もう満杯!?」
天気は確かにいいけれど、そんなに早くに充電が終わるものなのだろうか。
「いや、まぁ、それならそれで、草刈り機も充電できるし」
不審に思いながらも、後部座席から草刈り機を取り出し、配線をつなぐ。これで充電できるはず。
その間に、お昼でも食べてしまおう。
「あー、これからガッツリ作る気は起きないから……やっぱりラーメンかなぁ」
今回はカップラーメンじゃない。袋麺だ。私が好きなのは塩ラーメン。家のキッチンだったら野菜炒めをスープで煮たりもするんだけど、今は生野菜がない。なので、生卵と乾燥ワカメを入れる。
「ここで畑でもやるのもありなのかなぁ……まぁ、もう秋になるし……これからだと何が育てられるんだろ?」
クッカー入りのラーメンをずるずるっとすすりながら、目の前に広がる土地に目を向ける。ここではネットが繋がらないから、調べようがない。また買い出しに行った時にでも、調べるか。
「……鶏とかヤギとか飼って、草、食べてもらった方が早そうだなぁ……」
いつになるかわからないけど。
クッカーを洗い終えて、もう一度、草刈りに行くか、と腰をあげた。草刈り機の充電はまだだろうし、と思っていたのだけれど。
「え!?」
もう充電終わってる!?
「これも異世界仕様!?」
びっくりして固まる私なのだった。
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