第72話 薪を作る(2)
シロタエに切断してもらったものの、私が薪割するには、まだまだ長さがある。
「これをもう半分くらいの大きさに出来ます?」
分割されて倒れている木材を指さし、シロタエに聞くと、足の爪一本で、さっくりいった。
マジか~!
このチェーンソーと重装備は意味がなかったか!
……い、いや、ホワイトウルフにお願いできると思ってなかったし、彼らが出かけることもあるし! けして無意味ではない!
でも、なんか悔しい!
『もしよければ、子供たちにやらせてもいいですか』
私が一人内心、うだうだしていると、ビャクヤが私に聞いてきた。
「いいけど、ハクたちにもできるの?」
『やったことない!』
『でもやってみたい!』
なるほど。もしかして、魔法の練習か。これだけ山盛りにあるんだから、やってもらっても問題はない。
「あ、だったら」
私は1本だけチェーンソーで半分にして(うるさくてごめん)、それを手斧で割っていく。
「できるなら、ここまでやれたら嬉しいんだけど」
『なるほど……お前たち、やってみるか』
『やるやる!』
『やるー!』
ということで、半分くらいを彼らに任せることにした。私は残り半分を『収納』して、彼らから少し離れたところで、再挑戦。ちょっとうるさいのは勘弁してもらう。
「よーし」
きゅいーーーーん
「おおお、凄い、凄い」
初めてのチェーンソーが、あまりにもスムーズで感動。それに、この大きさだと、スウェーデントーチなるものも挑戦できるんじゃない?
このサイズのものはそのまま『収納』にいくつか保存しておこう。
「ふんふんふ~ん♪」
気持ちよく短い丸太を作っていく。これってば、ストレス発散にばっちりなんじゃない?
「それ以上に薪割で発散できそうだけど」
一つだけ台座用の丸太を用意して、薪用のを載せる。
「そーれっ」
カコーン
「どっこいせー」
カコーン
「こんちくしょー」
カコーン
……なんか、めちゃくちゃ上手く割れてるんだけど。
動画なんかでは、けっこう端っこだけ削っちゃった~、みたいなぶりぶりな女の子もいたんだけど。私、薪割名人?
「ほいさー」
カコーン
夢中に薪割していると、ぽつりと地面に水滴が落ちたのがわかった。そして、パラパラと徐々に雨音が聞こえだした。
「やばい、やばい! 薪が濡れちゃう!」
慌てて木材全部を収納する。ハクたちのはどうなっているだろうか、と思って振り向いたら。
「あちゃ~」
丸太状態のものが半分、薪……薪といえるのか? なんか、ボロボロになっている木片が半分。
ハクとユキはかなり上機嫌だったけれど、親の方は申し訳なさそうな顔をしている。ホワイトウルフの表情がわかるのも、従魔となったからだろうか。
「……いや、私が頼んだんだし。火口用にもなるよ……ね?」
私は苦笑いをしながら、彼らの下へと急いだ。
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