第71話 薪を作る(1)
昨日は散々、『伐採』をしまくったので、さすがに疲れたから早めに寝てしまった。おかげで、まだ日が昇る前に目が覚めてしまった。
しかし、やる気が漲っている。
――今日こそは薪を作るぞ!
先日の爆買いで手に入れた、黄色というか黄土色のつなぎ! それに、ヘルメットにフェイスシールド!
「うん? ちょっと天気が怪しいか」
この敷地に住み始めて、もう2か月近くなるけれど、あまり天気が崩れたことはなかった。正確に言えば、雨が降ったことがなかった。その割に、乾燥している感じではないのは、山の中のせいなのだろうか?
「早めにやれるだけやるか」
木材はすでに『枝払い』を終えて、そのまま『収納』してある。地面に転がした状態ではチェーンソーで上手く切れないので、台座になるように少し大きめの石をいくつか直線になるように置いた(自分の力では持ち運べない。『収納』大活躍)。
「では、ここに木材を置いてっと」
ドスンッという音とともに現れた木は、真っすぐに伸びている。昨日切ったばかりだから、まだみずみずしい感じ。
「さて、いきますか」
きゅいーーーーん
チェーンソーの電源を入れて、いざ、木材へ! と思っていたら。
『サツキ! だいじょうぶかっ!』
『すごいおと! なに!』
「ちょ、ちょっと、危ないっ!」
山からハクとユキが駆け込んできた。その後を、まさかのビャクヤとシロタエまでついてきていて、びっくり。
慌てて、チェーンソーの電源を切る。
「ご、ごめん、ごめん。うるさかったかな」
『フンフン、それ、なに?』
『こいつか!』
子供らの興奮気味な様子をよそに、ビャクヤたちは私の近くまでやってきた。
『先ほどの音は、それの音ですか』
「そ、そうなんですよ。これで、木を切るんです」
ビャクヤたちは、子供たちと違って、私に敬語を使う。従魔になったということは、私が主ってことなんだろうけれど、ビャクヤの年齢を知っているだけに、なんとも居心地が悪い。
私がチェーンソーを持ち上げてみせると、2匹は不思議そうに見つめる。
『木を切りたいんだったら、私たちでもお手伝いできると思いますよ』
「え?」
いきなりシロタエが右の前足を上げたかと思ったら。
サクッ
「ええええええっ」
見事に、あの長い木が5等分にされてしまった。
「な、何が起こったの!?」
『私の風魔法で、木を切ったのですよ』
あ。そういえば、彼らは魔法が使えるんだった。いや、それにしたって。
「……あっさり、ばっさりいくなんて」
『他には、いいのですか?』
シロタエの首を傾げた姿が可愛くて、思わず、胸がズキューンとなる。
『五月様?』
「う、あ、はい。とりあえず、大きいのを切っていただけると助かります」
私はもう少し細かくしたいので、大きいのを分断するのをシロタエに任せ、5等分になった物を『収納』する。
彼女の魔法であれば、石の支えはいらないらしい。まとめて置くように言われて、山盛にしたら……あっさり、全部5等分になってしまった。早い、早すぎるっ!
「あ、ありがとう」
『いいえ、これくらいでしたら』
私には、シロタエがニッコリと笑っているように見えた。
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