第4話 自棄キャンプに悪戦苦闘(2)
「ゆ、夢……だよね」
目が覚めて最初に出た言葉。テントの中で横たわったまま、無意識に零れた。
ふと、外を見ると、すでに昼を過ぎたのか、日が傾いている。
「あ、まずい、さっさと荷物下ろさなきゃ」
慌てて、助手席に置いておいた大きめのリュックサックを下ろす。中には着替えや、タオル類などを詰め込んである。
車の後ろのトランクには、近所のホームセンターで買った大きめのプラスチックのカゴ。その中には、キャンプ道具一式が詰め込んである。
「お、も、いっ」
自分で車に載せたはずなのに、やたらと重く感じるのはなぜだ。
一通り諸々の荷物を下ろすと、まずはミニテーブルを設置する。その脇には折り畳みのイス。焚火台を置くと、やっとキャンプっぽくなった気がした。
折り畳みのイスにどっかと腰を下ろす。空を見上げると、青かった空が若干赤みを帯びてきている。すっかり夕方だ。
キャンプ場には、あんなに早い時間に着いたのに、どんだけ寝てたのだ。
「よし、まずは、火だね、火」
下ろした荷物の中に、薪の束を見つけ出す。これでいきなり火がつかないのは、散々、動画や本で勉強をしていた。私はテントの周辺の雑木林の中から、枯れ草や折れた枝を探しまくる。松ぼっくりがあればいいんだが、植生が違うのか見当たらなかった。
私は焚火台に薪を組んで、その下に枯れ草や枝を置いてみる。
「それと、着火ライターっと」
ライターの先を枯れ草につっこんで、火をつけた。
「……点いて……点いて」
念じるように呟くと、徐々に火が薪にも燃え移っていった。
「……はぁ、よかったよぉ」
本当は、ファイヤースターターとかで、ジャッジャッとやれたら格好いいのだろうけれど、初心者にはハードルが高すぎる。次とか、その次とかでやれたら……いいなぁ。
「……」
私は無言で焚火を見つめる。まさに無心。
パチパチと弾ける音とともに、時間は滔々と流れていく。
「静かだ」
ポツリと呟いた自分の声の大きさに少しだけ驚く。風や虫の音がやたらと耳に入って、自分が自然の中で一人きりなんだな、と痛感させられる。
くぅ~。
お腹の音で、自分が空腹だったことに気付いた私は、クーラーボックスを開けて、中身を確認する。さっき寝る前に食べたのは、コンビニのおにぎりだったけれど、せっかくのキャンプ。ちゃんとキャンプ飯を堪能したい。
500㎖の水の入ったペットボトルに、家を出る前にチャック付きのビニール袋に一合分ずつ分けて入れてきた無洗米を取り出す。
小学生の頃に飯盒炊さんの経験はあったけれど、大人になっては初めてだ。さすがに飯盒は買えなかったので、100均で買ったメスティンと固形燃料、ミニストーブをテーブルの上に置く。同じく100均で買ったクッカーに、レトルトのカレーも置いてみる。
そう。レトルト。本当のキャンプなら、一から作るべきなのだろうけれど……今の私は楽なのを選びたい。その代わり、ちょっとお高いレトルトだけどね。
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