第54話 私はタブレットを使いこなせていない
収穫を終えて、畑の脇に置いておいた折りたたみイスに座り、タブレットを手にする。『ヒロゲルクン』での『栽培』のメニューがどうなってるか、確認するつもりだったのだが。
今更ながらに、気付いた。
「馬鹿みたい。たくさん育てて、『収納』で『売却』したっていいじゃない」
そもそも、麻袋に入れている根菜類だって『収納』できるんじゃ……あ、そういえば、保存って利くんだろうか。
よくファンタジーな世界では、『マジックバックの時間停止機能付き』は高価だったり、国宝級なんてネタがあったけれど、このタブレットの『収納』はどうなんだろう。
ずっと、『伐採』した木材や、草刈りで出た葉や枝を自動で集めたり、『廃棄』する機能でしか使ってこなかった。
草刈りで『薬草』を見つけて、『売却』できるようになったのに驚いたのは、ついこの間のことなのに!
……もしかして。
湧き水を入れるために、わざわざ車で行く必要もなかった?
草刈り機担いで、湧き水あたりまで歩いていく必要もない?
「馬鹿なの? 私。一か月近くたってから気が付くなんて! ……馬鹿すぎて泣ける」
膝から崩れ落ちたのは、言うまでもない。
しばらく呆然としていた私だが、なんとか復活。
――まだ自分、異世界慣れしてないんだ、うん、そうだそうだ。
そう自分に言い聞かせつつ。
「と、とりあえず、まずはこの『ヒロゲルクン』の機能を再確認っと」
……はい。『ヒロゲルクン』の『栽培』メニューに増えてました。
うん。なんとなく、予想はしてた。『タテルクン』と一緒ね。
黒ポットの状態の時には反映されてなかったので、畑に植えた物だけが対象になっているのだろう。これだったら、そのまま放置して種を採ることも、種を買ってこなくてもいいわけだ。
「さて、肝心の『収納』の機能の確認しないと」
草刈りで出た草は、すぐに『廃棄』してしまっているし、枝は、キャンプ地の端に山積みにしている。
「とりあえず、あのキャベツの葉っぱ、を入れておこうか」
外葉の部分はまだ畑に残ったまま。これを『収納』して、しばらく様子を見よう。
半分くらいを『収納』し、残り半分は鶏の餌にした。
翌日の朝。
「……やっぱり、萎れる」
掌にはしおしおの葉っぱ。やはり、生鮮食品とかは入れておかない方がいいようだ。
そのまま『廃棄』はもったいないので、これも鶏の餌にすべく鶏小屋へ。
「あんなにいっぱいあったはずのキャベツの葉っぱ……そんなに美味しかったの?」
すっかりエサ入れに置いておいた葉っぱはなくなっている。稲荷さんが買ってきてくれた餌は残ってるんだけど。とりあえず、しおしおの葉っぱを置いて、今日の卵は~なんて、思いながら、探してみると。
「なんじゃこりゃ」
卵、いつもの2倍くらいデカい。そもそも、どうやって産んだのよ!?
どうなってんの!? 異世界仕様!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます