第53話 デカい野菜は異世界仕様?

 草刈りは、なかなか進まなかった。

 集中してやれれば、確かに、当初の目論見通りに、4、5日でいけた……かもしれない。

 しかし、草刈りも大事だが、畑仕事も大事なのだ。


 最初に植えた芋・たまねぎ・にんじん。

 これは、2つあった小屋のうちの1つに、それぞれ麻袋にパンパンに詰まった状態で置いてある。この前、稲荷さんにおすそ分けしたけれど、あまり減った気がしない。

 正直、ちょっと多すぎたと、反省中。いや、でも、ここまでとは予想してなかったし。

 そして、黒いポットに入れておいた野菜たちの芽が、無事に出てきて、いい感じに成長してきていた。あの『ヒロゲルクン』仕様のとは違い、たぶん、普通だ。


「さてと、植え替え作業しなきゃね」


 とはいうものの、葉物野菜は長持ちしない。もしかしたら、また、メチャクチャ育ったら、もったいないことになりそうなので。

 黒いポットを2つずつ、畑に植え替えてみた。植え替えたのは大根・ほうれん草・キャベツ・にらだ。ちゃんと私も学習している。

 楽しみにしながら、翌日の朝。


「はい、予想通り~」


 全部、立派に育ってる。思わず空笑いがもれる。


 いや、予想以上かもしれない。


 地面から見える大根の頭の部分の大きいこと!

 ほうれん草に、にらも青々としている。

 キャベツに至っては丸々としていて、欧米でいう、キャベツから赤ん坊が生まれる、という話はコイツのことか、と言いたくなるくらい。立派どころではない。

 最初に『栽培』メニューで植えた芋たちも、けっこう立派な物であったけれど、スーパーでも、売っているサイズではある。

 でも、これらは普通のスーパーで売ってもいない大きさな気がする。あちらの種だったからなのか、それとも苗まで黒いポットで個別に育てたせいなのか。


 そして、こんなにすぐに育ってしまうんだったら、季節関係なく、色んな野菜、育ててもいいんじゃないか、と思えてくる。

 そしたら、毎週のようにスーパーに買い出しに行かなくてもいい!


「ナスとかピーマンとかトマトもいける? あ、かぼちゃとかサツマイモとかも同時に出来たり?」


 いや、野菜だけじゃない。


「果樹とか植えたらどうなるのかな」


 山側のウッドフェンスの前あたりに、リンゴや梅や栗みたいな果樹を植えるのを想像する。

 


「あ、ブルーベリーとかもいいかも」


 できた果物でジャムを作るとか。梅だったら、梅酒なんかもいいかもしれない。


「なんかスローライフっぽい~」


 実際には、全然、スローじゃないけど。


「それにしても……これも精霊さんのおかげなのかな……いつもありがとねぇ」


 そう呟きながら、大根を引っこ抜く。スポンッと気持ちよく抜けて、思わず、大根を軽くたたく。いい感じの重量感だ。


「煮物にしようかな、味噌汁の具でもいいし……大根の葉で炊き込みご飯にするのもいいな」


 わくわくしながら、他の野菜も抜いていく。

 根菜類と違って、葉物野菜は傷みやすい。こんな大きくなるんだったら、やっぱり、量はセーブしないと駄目かもしれない。

 当然、記念にスマホで画像を保存したのは言うまでもない。

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