第2話 自棄キャンプに悪戦苦闘(1)

 初めてのソロキャンプに利用したのは、前から気になっていた山奥のキャンプ場だった。久々の運転にヘロヘロになりながら、指定されたサイトまで車で乗り込む。

 ある程度は整地されてはいるものの、山の中だけに雑草があちこちに生えている。山奥過ぎて、利用者が少ないのか。

 すでに太陽はのぼり、霧も晴れていた。


「着いた」


 ポツリと呟いて、私はハンドルを抱きかかえながらよりかかる。


「……テント張ってから寝よ」


 このまま車の中で寝たら、起きたら夕方、なんてことになりそうだ。

 車から降りたら、後ろの座席から荷物を降ろさなくちゃ。まずは、テントを張って荷物を置けるようにしないといけないか。

 中古で買った二人用のテントは、けっこうずっしりと重い。元カレがフリマアプリで買ったのを、そのまま私の部屋に置きっぱなしにしていったもの。ヤツが持ち運んで組み立てるんであれば問題はなかっただろうが、正直、私には重い。


 ――でも、今はこれを使ってキャンプするしかないのだ!


 比較的平らな地面を見つけると、そこにテントの入っているバッグを置く。気合をいれて組み立てようとするんだけど……重い! それに、どれに何を入れるの? いや、立てる?

 慌てて説明書を探すけれど、中古過ぎて説明書も入ってなかった!


「なんでこんなの買ったのよ! てか、私の部屋は粗大ごみ置き場じゃないわいっ!」


 悪戦苦闘すること30分。寒いくらいだったのが、すっかり額に汗している状態だ。


「あー、疲れたー」


 出来上がったテントの中で、ごろんと寝転んだら、ごつんと後頭部を打ってしまった。


「あ、痛い……直に寝ちゃダメだわ」


 慌てて車から寝袋と大きめのブランケット、折り畳みの凸凹のレジャーマットを下ろして、テントの中に敷いて再度チャレンジ。


「おお~、いいじゃない」


 ごつごつしてたのが、まったく感じなくなる。それに、これなら地面の冷たさも緩和されるかも。


「さてと、あとは他の荷物を下ろすだけ下ろして……朝ごはん食べよ」


 すっかりブランチな時間になっていることはスルー。それよりもお腹がすいていることのほうが耐えられない。

 まずはクーラーボックスを下ろす。この中に、行きに寄ったコンビニで買ったものが入ってる。


「あ、あった、あった……まずは、おにぎりと」


 すっかり冷えてしまって固めになってるおにぎり。お湯でも沸かして、お茶でもいれたいところだけど、それよりも腹ごしらえしてしまいたい。


「あー、管理小屋の脇にあった自販機で、温かいお茶、買ってくればよかったなぁ」


 ぶちぶちと文句をたれながら、私はおにぎりにかぶりつく。3個買ってきたおにぎりは、あっという間に私のお腹の中へ。

 荷物はまだ半分くらい車の中に入ったままだけれど、お腹が少し落ち着いたせいもあって、眠くなってくる。


「とりあえず、寝よ」


 私はテントの中の寝袋に入り込むと、あっという間に意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る