第69話 ホワイトウルフに名前を付けた
ホワイトウルフたちと話が終わったのか、稲荷さんが振り向いた。
「望月様~」
「あ、は、はいっ」
「あのですね、このホワイトウルフたちも、この敷地に入ってもいいですかねぇ」
「え。だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫」
稲荷さんの言葉に、ホワイトウルフの親たちが頭を下げた。
――うわー、ちゃんと会話が通じてるってこと?
――私が許してなかったから、敷地に入ってなかったということ?
なんか凄い、偉い。
「あ、じゃあ、入ってもいいです」
すると、二匹がすっくと立ち上がって、ゆっくりと敷地の中に入ってきた。
いやぁ、デカいデカいと思ってたけど、ここまで近づいたら、やっぱり迫力が違うわ。私の目の前まできたかと思ったら、大人しくその場でお座りをした。
「望月様~、どうぞ、撫でてやってくださいな~」
「え、え、いいの?」
思わずホワイトウルフに聞いてみると、目の前で頭を下げてくれた。
うわー! うわー! うわー!
あまりの嬉しさに、わたわたする。そして、そっと手を伸ばし、頭のあたりを撫でた。
――やだー! すごい、すべすべする!
――子供たちの毛ざわりもよかったけど、親のもまたなんともいえず、いい!
「そういえば、この子供らに名前とかつけてないんです?」
「あ、はい」
そう言われて目の前にお座りするホワイトウルフの子供らに目を向ける。
正直、こんなにしょっちゅう来るとは思っていなかったし、かといって、ちゃんと戻る場所があるようだから。
下手に名前をつけてしまって、いなくなったら、余計に寂しくなる。
そう思ったから、名前を付けなかったのだが。
「ぜひ、この4匹のホワイトウルフに、名前を付けてやってください」
「いいの?」
そう言って、ホワイトウルフの家族に目を向けると、夫婦は頭を下げ、子供たちは盛大に尻尾を振った。
「わかった。ん~」
名前なんて考えたのなんて、いつぶりだろうか。
子供の頃、家でペットなんて飼えなかった。考えてみれば、小学校の時、飼育係で世話をしていたカエルに、『ぴょんた』と付けたのが、最初で最後かもしれない。
――参った。思い浮かばない。
チラリと目を向けると、4匹の期待の眼差しが痛い。
4匹ともが白いし、種族にも『ホワイト』とあるくらいだから、『白』にかけた名前が無難だよなぁ。
ジッと子供の方に目を向ける。オスとメスの双子。もう単純なのしか思い浮かばない。
「オスの方がハク、メスの方がユキ」
そう名付けた途端、ポワンッと2匹が光った。
「え、ひ、光るもの!?」
「さぁ、さぁ、親の方もお願いしますよ」
「あ、はい」
白、白、白……ああ、短い単語は、無理だ。
「じゃ、じゃあ、父親の方がビャクヤ(白夜)、母親の方がシロタエ(白妙)」
子供たちよりも、より一層力強く光った。
「な、何が起きてるの!?」
光が落ち着いた頃、4匹の姿が目に入る。
毛皮の輝きが違う。元々、野生の生き物にしては綺麗な毛艶だと思ったけれど、今、目にしているのは、レベルが違う。
『愛し子よ、これからもよろしく』
ふわっつ!?
いきなり、頭の中に、イケボが響いた。
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